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「選挙は買い」は本当か?2024衆院選でどうなる?選挙と株価の関係、選挙関連銘柄、過去の衆院選での値動きを解説

市場用語再点検!選挙と株価

(この記事は23年8月4日に公開したものを再構成しました)

【QUICK Money World 辰巳 華世】株式市場で「選挙は買い」は本当か?衆議院と参議院の国会議員を選出する国政選挙は世の中に大きな影響を与える一大イベントであり、当然、株式市場にも大きな影響を与えます。選挙は、大きな注目を集める株価材料の一つです。

自民党は、9月27日投開票の総裁選で石破茂氏を第28第代自民党総裁に選出しました。石破首相は10月9日に衆院を解散。第50回衆院選は15日に公示され、27日に投開票されます。

近々行われる衆院・総選挙を前に、今回は、選挙と株価という視点から、経験則(アノマリー)として、「選挙は買い」なのかどうか?を検証してみたいと思います。過去の選挙が株価にどういう影響を与えてきたのかを探りつつ、選挙時の投資戦略を考えてみましょう。

 

■「選挙は買い」ってホント?

株価を動かす材料はいろいろありますが、国政選挙は株式相場を動かす大きな材料です。過去にあった国政選挙を思い浮かべてみると、確かに、選挙前後から政治絡みのニュースは株式市場でも大きな注目を集め、その動向が注視されます。国政選挙は間違いなく株式市場の大きな株価材料です。

選挙が株価を動かす材料であるならば、選挙と株価の関係も気になるところです。株式市場では「選挙は買い」という話をよく耳にしますが、これはホントなんでしょうか?

過去の国政選挙を紐解いてみると、2000年以降これまで8回の衆議院総選挙が行われてきました。ちなみに、衆議院選挙は、4年の議員任期満了によるものと、衆議院の解散によって行われるものの2つがあります。

解散日から選挙日前営業日までの日経平均株価の騰落率を見ると8回の選挙のうち7回で株価が上昇しています。下の表で赤い背景が株価上昇です。8回中7回の株価が上昇していることを踏まえると、選挙で株価が上がる傾向が見受けられ「選挙は買い」はホントだったと言えそうです。

解散日30営業日前から解散日までの騰落率を見ても8回の選挙のうち6回株価は上昇しています。解散日前は下落した2009年の選挙も解散日から選挙日までは9%上昇しています。

【衆議院選挙と日経平均株価】

衆議院選挙日 解散日30営業日前から解散日騰落率 解散日から選挙日前営業日まで騰落率
2000/6/25 -11.98% 0.97%
2003/11/09 5.48% -1.46%
2005/09/11 3.20% 7.75%
2009/08/30 -1.38% 9.14%
2012/12/16 1.81% 7.91%
2014/12/14 12.14% 0.08%
2017/10/22 3.35% 5.38%
2021/10/31 0.35% 1.20%

*解散日、選挙日が休日の場合は前営業日

さて、そもそもなぜ国政選挙は株価に影響を与えるのでしょうか?

それは、国の政策は企業や産業へ大きな影響を与えるからです。例えば、政府が進める経済成長を促進する政策によって、企業の業績が改善します。景気が回復することで、株価上昇に繋がります。選挙によって政権が変わったり、政府の政策が変わったりすることは、企業や産業界に大きな変化をもたらす可能性があります。

また、政策により特定の産業や企業に対する規制の強化や緩和が起こる可能性もあります。こういった変化も企業業績を左右することがあります。

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■参院選の場合は?

参議院選挙の場合はどうなのでしょうか?参議院は、衆議院のように解散されることがないので、参議院選挙は3年ごとに必ず行われます。

任期は6年ですが、3年ごとに定員の半数が改選されます。2000年以降の参議院選挙は、これまで8回ありました。

過去8回の参議院選挙日と30営業日前の日経平均株価の騰落率を比べたところ、8回の参議院選挙のうち3回株価は上昇していました。2013年の参議院選挙では13%と大きく上昇しましたが、これは参議院選挙をきっかけにというよりは、2012年に発足した第二次安倍晋三内閣のアベノミクス相場が2013年に本格化したことも影響しています。参議院選挙の場合は、「選挙は買い」と言えるほど明確な傾向はないようです。

【参議院選挙と日経平均株価】

参議院選挙日 選挙日と30営業日前騰落率
2001/7/29 -7.76%
2004/7/11 1.67%
2007/7/29 -3.83%
2010/7/11 -1.88%
2013/7/21 13.30%
2016/7/10 -11.49%
2019/7/21 2.79%
2022/7/10 -3.11%

*選挙日は休日なので前営業日で計算

■選挙で買われる銘柄やセクターは?

選挙は大きな株価材料であり、選挙によって動く銘柄や業種があります。一つは、選挙関連銘柄です。もう一つは、政策関連銘柄です。その時に勝利しそうな政党が掲げる公約で業績が影響を受けやすい業種や銘柄です。

まず選挙関連銘柄について説明します。選挙関連銘柄とは、衆議院選挙や参議院選挙が行われるたびに業績への影響が期待される銘柄です。

衆議院選挙は、4年の議員任期満了によるものと、衆議院の解散によって行われるものの2つがあります。一方で参議院議員の通常選挙は、3年ごとに参議院議員の半数を改選する選挙です。任期は6年ですが、3年ごとに定員の半数が改選されます。この様に衆議院、参議院ともに、一定の間隔で国政選挙が行われることが分かります。

選挙が近くなると選挙関連銘柄はテーマ株として注目を集める傾向があります。国政選挙の運営費は大きく、例えば、選挙用品や印刷、世論調査やアンケートを行う企業や、2013年から解禁された「ネット選挙」に関連する企業などの業績改善が期待されます。

具体的には、選挙関連機器のムサシ(7521)、投票用紙自動交付機のグローリー(6457)、選挙用通知封筒などのイムラ(3955)、選挙の出口調査などに人材を派遣するパソナグループ(2168)、トランス・コスモス(9715)などがあります。インターネットを使った選挙運動の関連銘柄として、子会社のドワンゴがニコニコ動画で選挙関連のプログラムを提供するKADOKAWA(9468)、電通グループ(4324)をはじめとするネット広告代理店などがあります。

テーマ株としての選挙関連銘柄は、短期物色であることが多く、短い間に株価が上昇し下落する傾向があります。

例えば、2021年10月31日に行われた衆議院選挙では、7月あたりから衆議院選挙がいつ行われるのか注目されていました。当時を振り返ってみると、衆議院選挙の時期は、オリンピック・パラリンピックが終わった後、かつ9月末に迎える首相の自民党総裁の任期前、つまり9月前半に衆議院を解散しての選挙、または、9月末の自民党総裁の任期を経て、衆院議員の任期満了に伴う形での選挙になるとの見方が多かったです。

その当時の選挙関連銘柄のイムラの株価を見てみると、8月あたりからテーマ株と意識され始め株価は上昇し、9月に高値を付けた後、株価は下落傾向に転じました。選挙関連銘柄は、近々選挙が行われるだろうという思惑の段階で、実際の選挙日より前にテーマ株として意識される傾向が多いです。

【イムラの2021年8月〜日足チャート】

もう一つは、政策関連銘柄や業種です。選挙で注目されるのは、その時に勝利しそうな政党が掲げている公約で業績に恩恵を受けやすい業種や銘柄です。これらの業種や銘柄には一貫性はなく、その時々の公約によるのでばらつきがあります。

石破氏の政策では、防衛力の強化や安全保障の確立、防災省の創設、地域経済の活性化、金融所得課税の強化などを掲げています。防衛・安全保障関連では、三菱重工業(7011)、川崎重工業(7012)、防災関連では消防車や救助工作車などを手掛けるモリタホールディングス(6455)やブルーシートメーカーの萩原工業(7856)などが意識されます。石破首相は初代の地方創生相を務めた経緯もあり、地域経済の活性化では、石破氏の選挙区にある鳥取銀行(8383)、日本セラミック(6929)などが注目されます。このほか、農産品の産地直送サービス「ポケットマルシェ」を運営する雨風太陽(5616)、「食」による地方創生を軸に不動産開発事業を手掛けるバルニバービ(3418)などがあります。また、金融所得課税を強化する方針についても注目を集めます。金融所得課税の強化は株式市場にとってはネガティブな材料となるので、この先の石破新政権での金融所得課税の行方は目が離せません。

株式市場には「国策に売りなし」という格言があります。国の政策に関連した業種や銘柄は値上がりしやすいという意味の相場格言です。国の政策は企業や産業へ大きな影響を与えます。選挙に勝ちそうな政党の公約や、その後、政権を取り政府として実行する政策は、株式市場で注目を集めます。国策として政府の支援や優遇措置などが考えられる関連企業や業界は、業績が改善する可能性が高まり株高へ繋がります。

■選挙の時に投資家はどう動く?

国政選挙は株価に大きな影響を与えます。2000年以降8回あった衆議院選挙は、株価の上昇傾向が見られ「選挙は買い」はホントの話でした。では、誰が買っているのでしょうか?

日本の株式市場の投資家は、外国人投資家、事業法人、個人、投資信託、年金、保険・銀行などその他と分類することができます。中でも外国人投資家の保有比率は約3割に上っており、日本の株式市場にとって外国人投資家の動向は大きな影響を与えます。

過去の選挙を振り返ってみると、2005年の小泉純一郎政権が郵政民営化法案の是非を争点にした「郵政解散選挙」や、2012年12月の選挙で第二次安倍内閣が発足しアベノミクス相場に繋がる選挙などでは外国人投資家が日本株を積極的に買ったと言われています。

実際、第二次安倍内閣が発足後の2013年から始まったアベノミクス相場では、外国人投資家が15兆円を超える買い越しとなり、株式相場を大きく押し上げました。

郵政民営化の選挙では構造改革が期待され、2012年の選挙は当時与党だった民主党への不満が高まる中、新たな変化が期待されました。改革や変化といった大きく流れが変わる可能性がある選挙では外国人投資家を始め多くの投資家が日本株を買う傾向が見られます。

 

■注意点:あくまで過去の経験則、常に当てはまるとは限らない

2000年以降これまで8回の衆議院選挙をみる限り、「選挙は買い」はホントだったと言えます。ただ、これはあくまで過去の経験則であり、だから、この先の選挙が必ずそうなると言い切れるものではありません。あくまでも傾向であり、実際は、その時々の政局や情勢を分析し、判断していく必要があります。

また、選挙関連銘柄は、国政選挙があるとテーマ株として注目を集めますが、短期間で話題となり人気化するだけの可能性が高いです。これまでの選挙をみても、実際の選挙日にはすでに株価が下落していることが多いです。

■まとめ

国政選挙は株価を動かす大きな材料です。過去の選挙を振り返ると、「選挙は買い」の傾向が確認できます。ただ、これはあくまで過去の経験則です。これからある選挙で株価がどう動くか、過去の経験則を踏まえつつ、政局や情勢を分析し判断して投資戦略を考えましょう。

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著者名

QUICK Money World 辰巳 華世

2003年にQUICKに入社後、15年間勤務。約5年にわたり日本経済新聞社、日経QUICKニュース社(NQN)にて記者職に就く。QUICK退社後、フリーランスライターとして2020年より「QUICK Money World」に寄稿。


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