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楽天グループの株と社債は大丈夫? 投資家必見のポイントを解説

記事公開日 2023/8/25 18:00 最終更新日 2023/8/29 10:03 経済・ビジネス コラム・インタビュー 市場用語再点検 個人向け社債 金融コラム

市場用語再点検!楽天グループの株と社債

【QUICK Money World 片岡 奈美】定期的に利子を受け取ることができる金融商品として、社債に興味をお持ちの個人投資家の皆さんも多いでしょう。銀行や電力、小売りなど様々な企業が社債を発行するなか、昨今何かと話題になるのが「楽天グループ(4755)」です。2023年1月にも個人向け社債を募集していましたから、記憶に新しいのではないでしょうか。

過去に多くの社債を発行していた企業は、その償還に合わせて借り換えのための社債発行を手掛けることも多く、楽天グループもそうではないか――とみられています。楽天グループが今後5年間で償還を迎える社債は1.2兆円に上るからです。そんな楽天グループ、実は株価がさえません。23年6月末には500円割れと、株式分割を配慮しても14年ぶりとされる低水準をつけました。背景には楽天グループに対する財務不安がある――などとされますが、一体、何が起きているのでしょうか。

投資家の皆さんは、テレビなどで「楽天」の文字を目にしない日はないでしょうし、携帯の新プランの発表や野球チームの活躍など、明るい話題にも事欠かない会社です。通信販売やクレジットカードなどで日々「楽天」を利用しているという方も多いでしょうし、ブランドイメージとしては確固たるものがあります。しかし一方で、低迷が続く株価や社債価格は投資家にとっては好ましくないものです。投資家の目線では楽天グループの業績や、今後発行される社債は大丈夫なのかと気になりますよね。社債投資に臨むにはどのようなリスクがあるのかといったことも踏まえつつ、投資戦略を考えるために、財務分析を通じて状況を振り返ってみましょう。

◎楽天グループの業績・株価の状況

まずは、楽天グループの直近の株価を確認してみましょう。QUICK Money Worldでも株価は随時更新されており、足元の水準は簡単に知ることができます。→QUICK Money Worldでの楽天グループの株価情報などはこちら
この記事を書いている7月の時点では、530円前後の水準で推移しています。ここ1年の株価の動きをグラフにすると、以下のようになります。

楽天G株価推移

グラフからは特に23年5月半ば以降、大きく株価が下落したことが見て取れると思います。株価が急落した直接のきっかけは、大型増資の発表でした。増資は株式の希薄化につながりますから、株価は下落しやすくなってしまいます。増資発表前に700円超だった株価は6月末にかけて連日で安値を更新。一時は466円まで下げました。そしてもう一つ、株式の希薄化以上に投資家が気にしているのではと指摘されているのが、赤字の続くモバイル事業の先行きです。

楽天グループの業績についてはもう皆さんご周知のとおりかもしれませんが、簡単にグラフにまとめると以下のようになります。

楽天グループの業績

楽天グループのモバイル事業は23年1~3月期に1026億円の赤字となりました。モバイル事業では、基地局整備などの先行投資が重くのしかかります。同事業が楽天グループ全体の収益を押し下げる格好で、楽天グループとしては通期で22年12月期まで4期連続で最終赤字が続いています。楽天グループは、モバイル事業の23年中の単月営業黒字の達成についても「困難」とすでに表明しています。

楽天グループ傘下の「楽天モバイル」では「Rakuten最強プラン」の発表もありましたし、テレビCMなどで明るいイメージをお持ちの方も少なくないでしょう。ただ、そういった側面と、業績へのシビアな投資家の目線はやや異なります。7月に入り株価は500円を上回るなど回復基調にはありますが、赤字が続くモバイル事業への投資家の懸念はまだまだ根強いと言えそうです。

 

◎楽天グループの直近発行した社債について

今後新たな社債購入を検討する際にはまず、“前回発行されたものと比べて条件がよいのかどうか”が最も気になる点かと思います。楽天グループは、直近では2月に個人投資家向けに「第22回無担保社債」を発行していました(現存する既発債の情報はこちら)ので、まずは22回債の発行条件を確認してみましょう。

楽天グループ第22回無担保社債は“楽天モバイル債”という愛称が付いていました。2年債で発行総額は2500億円。個人投資家向けの社債ですから、最低購入単位は50万円に設定されていました。応募者利回り(利率)は年3.3%で、日本格付研究所(JCR)から「シングルA」の格付けを取得していました。

22回債の条件表

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◎発行している個人向け社債は大丈夫?リスクは?

2月に発行された22回債は、この超低金利下で年3%超の利息を受け取れるということもあり、相応の人気を集めたようです。楽天証券もホームページで紹介していましたが、銀行預金よりも高いうえによく知る企業ならと関心を持たれた方も少なくないでしょう。

ただ、投資にはリスクが付きもの。発行条件が皆さんの考えうる投資リスクに見合うリターンを得られるものなのかを考えるためにも、ここで社債投資の抱える一般的なリスクについて、今一度確認しておきましょう。

社債は「信用リスク」を投資対象にして利益をあげる金融商品です――というのはよく言われることかもしれませんね。ここで言う社債のリスクは大きく2つ、ひとつは“発行体がどのくらい倒産しやすいか”ということ、もうひとつは“流動性(換金しやすさ)はどのくらいあるのか”です。これらのリスクを加味して社債の金利が決まってきます。簡単に図にすると以下のようになります。

社債の利率

リスクフリー金利というのは、社債を発行する企業の事情には全く左右されない部分です。リスクが最も小さく、ゼロに近いと考えられるものの金利で、国債利回りなどが用いられることが多いです。そこに発行体独自の事情で左右される部分が“スプレッド”として上乗せされて発行利率が決まります。

“この企業なら確実にお金を返してくれる”と皆が思うほど、つまり発行する企業の信用力が高いほど、低い金利で発行されることになります。一方で、この企業は約束した利払いや償還をきちんとできるのか…と懸念されるほど、高い金利が求められるようになっているわけです。

信用リスクの大きさを推し量るには、第三者機関である格付け会社による「格付け」がひとつの参考になります。社債の発行者がきちんと約束した通りに利息や元本を払えるかなどの信用度合いを一定の尺度で示したものです。

ですが、もっとも大切なことは、社債を発行する企業について投資家自身が関心を持つことです。よく見聞きする企業だから――というイメージのみで、こんなに金利がもらえるならと飛びつくのは不用心です。社債投資は年限が短ければリスクが低いとか、リターンが高ければお得などと簡単に判断できるものではありません。

企業自身がホームページなどで公表する投資家向け広報(IR)資料や、金融庁の電子開示システム「EDINET」などで開示される目論見書や有価証券報告書などは誰でも見ることができます。投資を検討する際にはぜひ一度目を通してみてください。発行登録書には社債発行によって得る資金の使い道なども書かれています。社債の発行企業が上場している場合は、会社の株価や既発債の価格などの状況も、会社の状況や先行きを他の投資家らが好感しているのか懸念しているのかなどを知る手がかりになります。

社債は発行企業の業績がどんなに悪化しても、満期日までに倒産さえしなければ、発行時に約束された利息と元本は投資家の手元に入ってきます。ただ、倒産してしまうと満額が手元に戻ってくることはほぼありません。中途換金の必要がなければ売りたい時に売れるかといった“流動性リスク”や、値下がり益を被るかもしれない“価格変動リスク”は多少は目をつぶることはできます。が、発行した企業が倒産するなどで利息の支払いや償還ができなくなる債務不履行(デフォルト)リスクは避けなければなりません。

社債に投資する際は、格付けやイメージなどに頼り切らず、個々の企業の足元の状況をよく注視しておきましょう。また、社債を保有した後も会社の経営状況には目配りし続けることもリスクを回避するうえでは大切なことです。

 

◎楽天グループの資金繰りは?倒産のリスクは?

楽天グループは携帯電話事業の設備への先行投資が響き、22年12月期まで4年連続の赤字となっています。足元の23年1~3月期の決算では赤字幅はやや縮小したものの、携帯事業の赤字が好調なEC(電子商取引)や金融事業の利益を打ち消してしまう構図は続いています。有利子負債も膨らみ、財務基盤に対する投資家の見方もシビアになりつつあります。

そんな中、投資家などがやや懸念を強めているのが、今後5年で1兆2000億円を超えるとみられる社債償還をどうこなしていくのか――ということです。2023年度第1四半期の決算短信やその補足資料などから、手元の現金の状況をみてみましょう。2023年3月末(楽天グループの第1四半期末)の現預金は連結ベースで4兆5042億円。潤沢にみえる資金ですが、その内訳は楽天銀行が4兆398億円、楽天証券が2482億円、楽天カードが2264億円などとなっており、楽天市場や楽天モバイルの資金を管理する楽天グループ単体の現預金残高は1175億円となっています。

米格付け会社のS&Pグローバルは22年12月に楽天グループの長期発行体格付けを「ダブルB」に1段階引き下げました。23年3月には格付投資情報センター(R&I)も格下げを発表、6月には日本格付研究所(JCR)も続きました。償還に合わせて楽天グループが新たに社債を発行した場合、その発行利率が過去に発行していたものよりも上がるのは避けられないとみられています。一部には資金調達のためにグループの優良な会社の切り売りを見通す声も出始めるなど、投資家からの視線は厳しさを増しています。

こうした状況を踏まえ、楽天グループの信用リスクはやや高まっているようです。足元で株価が冴えないことは前述しましたが、過去に発行された社債の価格も下落しています。

既発債価格の推移

また、企業の信用リスクを取引する「クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)」を見てみると、楽天グループの保証料率は22年初めに比べ足元では水準を切り上げているようです。CDSは対象となる企業などの倒産リスクに備える性質もあることから、デフォルトリスクが高いとみられるほどCDSの保証料率も高くなります。

◎まとめ

保有すれば決まった時期に利息がもらえて、満期には元本が償還される社債は、足元の超低金利環境下では「預金よりもお得」とみえることもあり、個人投資家からも人気を集めているようです。途中で売却しなければ株式投資のように日々の値動きに一喜一憂する必要もありませんから比較的取り組みやすい面はあるかもしれません。さらに個人投資家に向けて社債を募集するような特に名の知れた企業のものならなおさら。テレビでよく見る、身近でサービスを利用しているなどのわかりやすい「ブランド力」も追い風に人気を集めることも珍しくありません。

とはいえ、社債に投資では個々の企業の経営状況などを確認したうえで“きちんと債務を弁済してもらえるかどうか”を投資家自身が見極める必要があります。そう遠くないうちに社債を発行すると見られている楽天グループですが、資金繰りに対する市場の警戒感は高まっています。社債発行も含め、今後の資金調達の成否に注目が集まっています。個人投資家の皆さんも投資を検討される際にはぜひ、こういった側面にも着目してみてください。

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著者名

QUICK Money World 片岡 奈美


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