背番号「17」のユニフォームを着た日本人観光客が目立ったロサンゼルス郊外にあるエンゼルスの球場。だがロサンゼルス市内で見かけるのはロサンゼルス・ドジャースの野球帽やTシャツを身につけたファンばかり。米国人の友人や知人にドジャース・ファンは多いが、エンゼルスのファンは1人もいない。チケット売買サイト運営の米スタブハブによると、野球大リーグ(MLB)全球団でドジャースは最も熱心なファンを持つチームらしい。ワールドシリーズ優勝7回、リーグ優勝24回、地区優勝21回。人気・実力ともにMLB屈指の名門だ。
フリーエージェントになったエンゼルスの二刀流、大谷翔平。ドジャースに移籍するかもしれない。ドジャース専門メディアのドジャース・ネーションは、大谷翔平の高校時代から獲得を目指してきたドジャースの夢が実現するときが来たと報じた。ワールドシリーズ優勝を逃したドジャースにファンは疲れはじめていて、大谷の移籍でファンを奮起させることができるとしている。米紙ロサンゼルス・タイムズは、ドジャースは大谷翔平と契約すべきとするコラムを掲載した。才能だけではなく、メンタルが強く熱意のある大谷はドジャースに必要だとしている。米紙ニューヨーク・ポストは、資金力、成績、地理的優位性を持つドジャースが獲得競争でリードしていると伝えた。
MLB約12球団が大谷翔平の争奪戦を水面下で繰り広げているとされる。名門ニューヨーク・ヤンキースやボストン・レッドソックス、大富豪がオーナーのニューヨーク・メッツ、ワールドシリーズ3回優勝のシカゴ・カブスなど東海岸や中西部のチーム、今年のワールドシリーズを制した南部のテキサス・レンジャーズ、ドジャースとエンゼルス、サンフランシスコ・ジャイアンツなど西海岸のチームなど幅広い。ドジャース優勢との見方は多いが、意外な予想もある。MLB公式サイトのMLBドットコムは、大谷翔平はシアトル・マリナーズに移籍すると予想した。シアトルの街が好きで、憧れであるイチローの「故郷」だとしている。
予想される契約金をめぐる報道も熱い。米紙USAトゥデーは、大谷翔平の打者および投手としての価値、チケット収入とテレビ視聴率押し上げ効果を考慮すると、10年契約で5億1000万ドル(約773億円)が妥当ではないかと報じた。米FOXニュースは、大谷翔平は今季のオフシーズンだけでなく、MLB史上最も注目されるフリーエージェントだと伝えた。契約金は過去最大6億ドル(約910億円)に達するかもしれないとしている。
MLBの全30チームが来期以降のリーグ運営や選手の去就などについて直接協議する今年のウインターミーティングは、12月4~7日にテネシー州ナッシュビルで開催される。ウインターミーティング終了前に大谷が移籍先と契約するとの報道が複数あり、大谷争奪戦をめぐる報道は過熱しそうだ。日本人としては大リーグに挑戦するオリックスの山本由伸の移籍先も気になる。米MLBドットコムは、山本の行き先はボストン・レッドソックスと「大胆8大予想」で取り上げた。ロサンゼルス・タイムズは、ドジャースが山本を含めた日本人スターの獲得を目指していると伝えた。
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福井県出身、慶應義塾大学卒。1985年テレビ東京入社、報道局経済部を経てブリュッセル、モスクワ、ニューヨーク支局長を歴任。ソニーを経て、現在は米国ロサンゼルスを拠点に海外情報を発信する。