【日経QUICKニュース(NQN) 宮尾克弥】11月は世界的に半導体関連株の上昇が目立った。半導体関連の代表的な株価指数として知られる米フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は15.8%上昇と、月間上昇率は2022年11月以来の大きさだった。8月以降は3カ月連続で下落し、17%の下落に見舞われたが、わずか1カ月で3カ月分の下げをほぼ取り戻した。新聞記事などでも取り上げられ、日本の投資家の関心も高いSOXだが、その歴史や構成銘柄について触れることは少ない。改めてSOXとはなにかをまとめた。
■米国を中心に世界の半導体関連の代表銘柄を集めた指数
SOXは米株式市場に上場する半導体関連30銘柄で構成され、ナスダックOMXグループのフィラデルフィア証券取引所が算出している。1993年12月1日を基準値100(開始当初は200。1995年に分割)として算出を開始した時価総額加重平均型の株価指数で、毎年9月に組入銘柄の見直しを実施する。
構成銘柄は半導体メモリーや製造装置、ファウンドリー(受託製造企業)まで幅広く網羅しており、「非常にバランスの取れた指数」(岩井コスモ証券の斎藤和嘉シニアアナリスト)として市場参加者の注目度は高い。
現在の構成銘柄は半導体のインテルや画像処理半導体のエヌビディア、半導体製造装置のアプライドマテリアルズ(AMAT)を始めとした米国企業を中心に、ファウンドリー大手の台湾積体電路製造(TSMC)やオランダの半導体製造装置ASMLホールディングなど米国以外の企業も名を連ねる。
SOX構成銘柄
項番 | 銘柄 | 事業内容 | チッカー | 23年騰落率 |
1 | アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD) | 画像処理半導体 | AMD | 87.1 |
2 | アレグロ・マイクロシステムズ | 自動運転システム向けセンサー半導体 | ALGM | ▲9.3 |
3 | アムコー・テクノロジー | 半導体パッケージ | AMKR | 17.5 |
4 | アナログ・デバイセズ | 集積回路など | ADI | 11.8 |
5 | アプライド・マテリアルズ | 前工程装置世界最大手 | AMAT | 53.8 |
6 | ASMLホールディング | EUV露光装置 | ASML | 25.1 |
7 | アクセリス・テクノロジーズ | 半導体製造用イオン注入装置 | ACLS | 56.6 |
8 | ブロードコム | 通信向け半導体デバイス | AVGO | 65.6 |
9 | コヒレント | 光電子部品 | COHR | 4.8 |
10 | インテグリス | 材料サプライヤー | ENTG | 59.2 |
11 | グローバルファウンドリーズ | 半導体ファウンドリー | GFS | ▲0.4 |
12 | インテル | 世界最大手規模の半導体メーカー | INTC | 69.1 |
13 | KLA | 検査装置 | KLAC | 44.5 |
14 | ラムリサーチ | 前工程装置 | LRCX | 70.3 |
15 | ラティスセミコンダクター | 半導体製品の設計 | LSCC | ▲9.8 |
16 | マーベル・テクノロジー | 組み込みプロセッサー | MRVL | 50.5 |
17 | マイクロチップ・テクノロジー | マイクロコントローラ | MCHP | 18.8 |
18 | マイクロン・テクノロジー | メモリー | MU | 52.3 |
19 | モノリシック・パワー・システムズ | パワーエレクトロニクスソリューション | MPWR | 55.2 |
20 | エヌビディア | 画像処理半導体 | NVDA | 3.2倍 |
21 | NXPセミコンダクターズ | アナログ半導体 | NXPI | 29.1 |
22 | オン・セミコンダクター | パワー・マネージメント・デバイス | ON | 14.4 |
23 | クォルボ | 通信機器向け半導体チップ | QRVO | 6.5 |
24 | クアルコム | 半導体設計 | QCOM | 17.4 |
25 | ランバス | 半導体、IP製品 | RMBS | 88.9 |
26 | スカイワークス・ソリューションズ | アナログ&ミックスドシグナルIC | SWKS | 6.4 |
27 | TSMC(台湾積体電路製造) | ファウンドリー最大手 | TSM | 30.6 |
28 | テラダイン | 検査装置 | TER | 5.6 |
29 | テキサス・インスツルメンツ | アナログ半導体 | TXN | ▲7.6 |
30 | ウルフスピード | パワー半導体、RF半導体 | WOLF | ▲46.6 |
SOX指数 | 47.1 |
(注)11月30日時点。騰落は%、▲は下落
■スマホ普及の半導体需要の増加をきっかけに急伸
SOX指数は12年までおおよそ200~500のレンジで推移した。潮目が変わったのはスマートフォンの普及が本格化し、半導体需要が増加した13年辺りからだ。さらに、20年の新型コロナウイルスの感染拡大による在宅勤務の増加でパソコンなどIT(情報技術)製品が爆発的に売れ、データセンター需要の急増も追い風となった。19年末に1849だったSOXは21年12月に4039の過去最高値まで上昇した。22年は米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締めに伴い、年間で36%下落したが、今年に入ってからは一転して急上昇し、再び最高値の更新をうかがう水準まで回復している。
半導体市場は生成人工知能(AI)や電気自動車(EV)の普及で一段の拡大が見込まれている。東京エレクトロン(8035)は30年に現在の倍となる1兆ドル(148兆円)を超える規模に拡大すると予測する。半導体関連の成長企業を集めるSOXの注目度はさらに高まりそうだ。
■高い日本の半導体関連株との連動性
SOXの年初からの上昇率は11月30日時点で47.1%とナスダック総合株価指数の35.9%を上回る。AI向け需要の期待から株価が3倍となったエヌビディアを筆頭に多くの銘柄が上昇した。半面、下落している銘柄も見受けられる。高PER(株価収益率)銘柄が多く長期金利の上昇局面では割高感から上値が重くなりやすいことが特徴だ。
日本の半導体関連株はSOXの影響を受けやすく連動性は高い。「半導体や素材より製造装置株が日々のSOXに連動して売買する動きが目立つ」(運用会社のファンドマネージャー)。アドバンテスト(6857)や東エレク、SCREENホールディングス(7735)、ディスコ(6146)など日本の半導体関連は値がさ株が多く、日経平均株価に対する寄与度が大きい。今年4月にはSOXと連動する上場投資信託(ETF)のグローバルX 半導体(2243)が登場した。SOXの動向からますます目が離せなくなりそうだ。