【QUICK Money World 荒木 朋】株式市場において株価は企業業績などのファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)のほか、トレンドの強さや過熱感といったテクニカル指標など様々な要因によって価格が形成されています。一方、時として経済的合理性などでは説明できない価格変動が起こることもしばしばみられます。こうした現象を相場のアノマリー(経験則)と呼んでいます。アノマリーとはそもそも何なのか?という基本知識を押さえるとともに、アノマリーが注目される背景や代表的なアノマリーとその内容について詳しく解説していきたいと思います。
アノマリーとは?
株式市場におけるアノマリー(経験則)とは、具体的・理論的な根拠はないものの、経験的に観測できるマーケットの規則性のことをいいます。基本的な投資分析手法として、一般的にはファンダメンタルズ分析やテクニカル分析が挙げられますが、これらの手法では説明がつかない株価の動き(現象)がアノマリーです。
偶然の出来事であればその発生確率は低いため無視しても問題ないのですが、投資の世界ではしばしば無視できないほどに高い確率で起こる現象があるといわれています。ファンダメンタルズ分析など既存の投資理論に基づく投資はそれで重要ですが、決して合理的とはいえないアノマリーを利用した投資手法も実際に存在します。
アノマリーを知識として頭の片隅に入れておくと投資の幅も広がり、投資パフォーマンスの向上につながる可能性もあるでしょう。
ファンダメンタル分析とテクニカル分析を整理
一般的な投資分析手法である、ファンダメンタルズ分析とテクニカル分析について簡単に整理しておきましょう。
ファンダメンタルズ分析は、企業の財務状況や業績動向などの基礎データをもとに、成長性や収益性、安全性といったその企業の価値を分析し、投資価値があるかないかを判断する分析手法のことです。投資先候補の企業が今後も成長を持続できるかどうかを入念に調査・分析するもので、短期的なトレンドにとらわれないことが特徴です。そのため、ファンダメンタルズ分析は中長期の投資目線で利益を追求するのに非常に有効な手法です。
テクニカル分析は、過去の株価の値動きをチャートで表して、そこからトレンドやパターンなどを把握したり、法則性を見出したりして株価の先行きを予測する分析手法です。株価チャートは過去の実際の取引結果で形成されたものです。過去に似たようなパターンが見つかれば、今回も同じようなパターンになる可能性が高いと予測するといったものです。もちろん、法則通りに動くとは限らないものの、短期目線での投資にも役立つ分析手法です。
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アノマリーが注目される背景は?
これに対し、アノマリーはファンダメンタルズ分析とテクニカル分析どちらにも当てはまらず、合理的に説明できたり、理論的な根拠があったりするわけではないのに、株価の予測が当たりやすい経験則のことをいいます。しかし、アノマリーは理論的な説明ができないといっても、過去のデータや傾向、季節性などの法則性に基づくものでもあるため、決して無視できないものです。この点、過去のデータから先行きを予測するテクニカル分析と相通じるものがありそうです。
テクニカル分析と同じで、ある程度の規則性を見出すことができるアノマリーが見つかれば、そのアノマリーは多くの投資家の間に広まっていくでしょう。人間の心理や行動原理に照らし合わせることで説明のつくアノマリーもあります。既存の投資理論に加え、アノマリーによる値動きやクセをうまく利用することができれば、高い投資パフォーマンスを上げることができるかもしれません。
「よく当たる相場の経験則」であるアノマリーを知識として身に付けて、相場予測の精度を上げるのにぜひ役立てましょう。
代表的なアノマリーを一挙に紹介!
アノマリーには、投資銘柄の属性が関係するものと、季節や時期が関係するものの2つに大別できます。
投資銘柄の属性が関係するアノマリーの代表的なものには、時価総額の小さい小型株の方が大型株よりもリターンが相対的に高くなりやすいとされる「小型株効果」や、高配当銘柄の株価は配当の権利付き最終売買日に向けて数週間にわたって上昇する傾向がある「配当アノマリー」などがあります。このほか、会社のホームページで社長が腕組をしているかどうかで株価の先行きを予測する「腕組みの法則」というアノマリーも知られています。
季節や時期が関係するアノマリーには、「1月効果」や「節分天井・彼岸底」、「4月に日本株が買われやすい」、「ハロウィーン効果」、「十二支のアノマリー」、「サザエさん効果」、「ジブリの法則」などが挙げられます。
「1月効果」とは1月のリターンが他の月よりも高くなりやすいとされる経験則です。これは新年を迎えて新規の投資資金が流入する傾向があるためといわれています。「4月に日本株が買われやすい」は、日本株の売買シェアの約7割を占める外国人投資家が4月に日本株を買う傾向があるというアノマリーです。「十二支のアノマリー」は干支(えと)にまつわる相場格言です。2023年は卯(う)年でしたが、相場の格言は「卯(うさぎ)は跳ねる」で、株価が上がる1年とされています。24年は辰(たつ)年ですが、相場格言では「辰巳(たつみ)天井」といい、辰年や巳年は株式相場が天井をつける傾向があるとされます。
24年は4年に1度の米大統領選挙が予定されています。米国株式相場では「大統領の前年は上昇する」とのアノマリーが有名です。現職の大統領が景気浮揚のために経済対策を打ち出すためとの解説が聞かれます。23年に主要な株価指数のうちダウ工業株30種平均が過去最高値を更新しました。
アノマリーをどう捉えるべきか?
ここまでアノマリーについて解説してきましたが、株式投資を行う上でアノマリーとどう付き合うのがいいでしょうか。過去のデータ検証などにより、高い確率で発生することが確認できるアノマリーもありますが、当然ながらアノマリーは100%当たるものではありません。投資する上でアノマリーはファンダメンタルズ分析やテクニカル分析とともにぜひ参考にしたい投資手法の1つといえそうですが、完全に信じ切るべきでもありません。特に投資の初心者の方は、アノマリーと似ている側面もあるテクニカル分析など基本的な手法から始めるのが良いかもしれません。そして、相場分析に慣れてきた段階で、アノマリーも参考にしながら相場予測の1つとして取り入れていくのが有効でしょう。
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上がった銘柄を買い、下がった銘柄を売るという順張り投資は市場平均のパフォーマンスを上回るという「モメンタム効果」や、循環物色の一形態の「リターン・リバーサル効果」もよく知られたアノマリーで、こうしたアノマリーを知っておくことは投資に有用ですが、辰年だから今年の相場は「昇り竜」という論は新春恒例ではあるものの、力説している人は阿呆に見えてしまう。