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米国大型成長(グロース)株に今から投資すべきか 期待リターンを考える(フィデリティ投信 重見吉徳氏)

記事公開日 2024/2/14 16:00 最終更新日 2024/2/14 16:00 米国株 フィデリティ 米国大型成長株

先々週に公表された米国の経済指標は、米国景気が依然として堅調である、もしくは現在、回復途上である状況を示唆しました。

まず、【次の図】に示すとおり、1月分の雇用統計では、非農業部門の雇用者数が前月から35万3,000人の堅調な増加となり、「米国景気が依然として力強く成長している」ことが確認されました。

2024年1月分の雇用統計:雇用者数は前月から35万3000人の増加。

さらに、【次の図】に示すとおり、平均時給は、前月比で+0.55%と高い伸びを示し、「米国のインフレ圧力が残っている」ことが示唆されました。

2024年1月分の雇用統計:平均賃金は前月から+0.55%の高い伸び。米国の民間部門平均時給(前月比)

また、【次の図】に示すとおり、1月分のISM製造業景気指数では、総合指数が前月から2.0ポイント上昇の49.1、これに先行する傾向がある新規受注指数は同5.5ポイント上昇して52.5となりました。OECD景気先行指数でも確認されているとおり、「『これから停滞が来る』のではなく、『いままでが停滞』であり、『これから回復』に向かう」可能性も考えられます。

2024年1月分のISM景気指数:新規受注は50超え。総合指数も今後50超となる可能性。

「ソフト・ランディング」をメインシナリオとして考える方も、「上振れ」や「下振れ」のリスクに備えて分散投資が求められる環境でしょう。

ふたたび、米国・大型成長株式の割高感に金融市場の注目が集まる。

経済指標が良くても悪くても株価が上昇する状況が続く中、金融市場ではふたたび、『マグニフィセント7』を中心とする米国・大型成長株式の割高感に注目が集まっています。

【次の図】に示すとおり、直近1月末時点のデータによれば、米国・大型成長株式の12ヵ月先予想PER(株価収益率)は28.8倍を超え、過去対比・他の市場対比でふたたび、割高感が高まっています。

米国・大型成長株式のPERは28.8倍超。主要な株式指数の予想12ヵ月PER(株価収益率)

また、【次の図】に示すとおり、米国・大型成長株式のバリュエーションを金利対比で考えると、米国・大型成長株式の益回り(=PERの逆数≒期待リターン)は約3.5%と、米3ヵ月物国債利回りの約5.4%を大きく下回っています。

米国・大型成長株式の益回り(期待リターン)と米国3ヵ月物国債利回り

いま米国・大型成長株式に投資をすると、今後10年間の期待リターンはどの程度か?

【次の図】に示すとおり、「各時点における益回り」と「その時点から10年間の実績リターン」は連動する傾向があります。言い換えれば、「期待リターン(益回り)が低いときは株価が割高であるときであり、そうしたタイミングで投資をするとリターンは低くなる」ということです。これにしたがうと、(現在の株価が割高なために)今後、10年間の実績リターンは0%~5%程度にとどまると目算されます。

各時点の米国・大型成長株式の益回りとその後10年間の実績リターンと  の関係では、今後10年間の同株式の期待リターンは、年率0~5%程度。米国・大型成長株式の益回りと実績リターン

また、【次の図】に示すとおり、「各時点におけるPER(株価収益率)」と「その時点から10年間の実績リターン」には「右肩下がり」の傾向があります。これは【前掲図】を異なる角度から眺めたにすぎず、①株価が割高であるときに投資をするとリターンは低くなる、②(現在の株価が割高なために)今後、10年間の実績リターンは0%~5%程度にとどまると目算される点は同じです。

各時点の米国・大型成長株式のPERとその後10年間の実績リターンとの関係では、今後10年間の同株式の期待リターンは、年率0~5%程度。米国・大型成長株式のPER(株価収益率)と実績リターン

いま米国・大型成長株式に投資をすると、今後10年間で、世界・大型割安株式や世界・中小型株式に対して、どの程度リターンが劣るか?

【次の図】に示すとおり、米国・大型成長株式のPER(株価収益率)を、世界・大型割安株式や世界・中小型株式のPER(株価収益率)で割って「相対PER」を求めると、現在の米国・大型成長株式は、世界・大型割安株式や世界・中小型株式対比で割高であることがわかります。

米国・大型成長株式は世界・大型割安株式&世界・中小型株式対比で割高。米国・大型成長株式指数の相対PER

そして、【次の図】に示すとおり、対世界・大型割安株式で考えるとき、現在の相対PER(約2.3倍)だと、米国・大型成長株式は世界・大型割安株式に対して年率で5%程度、リターンが劣っても不思議ではありません。

今後10年間の米国・大型成長株式は、世界・大型割安株式に対して、年率5%程度、リターンが劣っても不思議ではない。米国・大型成長株式の相対PER(vs. 世界・大型割安株式)と実績相対リターン

また、【次の図】に示すとおり、対世界・中小型株式で考えると、現在の相対PER(約1.9倍)だと、米国・大型成長株式は世界・中小型株式対比、年率で5%~10%程度、リターンが劣っても不思議ではありません。

今後10年間の米国・大型成長株式は、世界・中小型株式に対して、年率5~10%程度、リターンが劣っても不思議ではない。米国・大型成長株式の相対PER(vs. 世界・中小型株式)と実績相対リターン

本稿のまとめ

『マグニフィセント7』を中心とする米国・大型成長株式の割高感が強まっており、たとえ長期間の投資でも、期待リターンは低く留まる可能性があります。

米国・大型成長株式の投資には、①短期投資と覚悟して利益確定のタイミングを見つけるか、②長期間の時間分散が必要でしょう。

米国・大型成長株式よりも期待リターンが高い株式への分散投資が、ポートフォリオの期待リターンや運用効率を改善させる可能性があります。


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著者名

フィデリティ・インスティテュート マクロストラテジスト 重見 吉徳

20208月、フィデリティ投信入社。農林中央金庫や野村アセットマネジメントにて外国債券の運用に従事。アール・ビー・エス証券にて外国債券ストラテジストを務めた後、2013年に J.P.モルガン・アセット・マネジメントに入社。個人投資家や金融機関、機関投資家向けに経済や金融市場の情報提供を担う。昭和の歌が好き(演歌・洋楽を含む)。


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