先々週に公表された米国の経済指標は、米国景気が依然として堅調である、もしくは現在、回復途上である状況を示唆しました。
まず、【次の図】に示すとおり、1月分の雇用統計では、非農業部門の雇用者数が前月から35万3,000人の堅調な増加となり、「米国景気が依然として力強く成長している」ことが確認されました。
さらに、【次の図】に示すとおり、平均時給は、前月比で+0.55%と高い伸びを示し、「米国のインフレ圧力が残っている」ことが示唆されました。
また、【次の図】に示すとおり、1月分のISM製造業景気指数では、総合指数が前月から2.0ポイント上昇の49.1、これに先行する傾向がある新規受注指数は同5.5ポイント上昇して52.5となりました。OECD景気先行指数でも確認されているとおり、「『これから停滞が来る』のではなく、『いままでが停滞』であり、『これから回復』に向かう」可能性も考えられます。
「ソフト・ランディング」をメインシナリオとして考える方も、「上振れ」や「下振れ」のリスクに備えて分散投資が求められる環境でしょう。
ふたたび、米国・大型成長株式の割高感に金融市場の注目が集まる。
経済指標が良くても悪くても株価が上昇する状況が続く中、金融市場ではふたたび、『マグニフィセント7』を中心とする米国・大型成長株式の割高感に注目が集まっています。
【次の図】に示すとおり、直近1月末時点のデータによれば、米国・大型成長株式の12ヵ月先予想PER(株価収益率)は28.8倍を超え、過去対比・他の市場対比でふたたび、割高感が高まっています。
また、【次の図】に示すとおり、米国・大型成長株式のバリュエーションを金利対比で考えると、米国・大型成長株式の益回り(=PERの逆数≒期待リターン)は約3.5%と、米3ヵ月物国債利回りの約5.4%を大きく下回っています。
いま米国・大型成長株式に投資をすると、今後10年間の期待リターンはどの程度か?
【次の図】に示すとおり、「各時点における益回り」と「その時点から10年間の実績リターン」は連動する傾向があります。言い換えれば、「期待リターン(益回り)が低いときは株価が割高であるときであり、そうしたタイミングで投資をするとリターンは低くなる」ということです。これにしたがうと、(現在の株価が割高なために)今後、10年間の実績リターンは0%~5%程度にとどまると目算されます。
また、【次の図】に示すとおり、「各時点におけるPER(株価収益率)」と「その時点から10年間の実績リターン」には「右肩下がり」の傾向があります。これは【前掲図】を異なる角度から眺めたにすぎず、①株価が割高であるときに投資をするとリターンは低くなる、②(現在の株価が割高なために)今後、10年間の実績リターンは0%~5%程度にとどまると目算される点は同じです。
いま米国・大型成長株式に投資をすると、今後10年間で、世界・大型割安株式や世界・中小型株式に対して、どの程度リターンが劣るか?
【次の図】に示すとおり、米国・大型成長株式のPER(株価収益率)を、世界・大型割安株式や世界・中小型株式のPER(株価収益率)で割って「相対PER」を求めると、現在の米国・大型成長株式は、世界・大型割安株式や世界・中小型株式対比で割高であることがわかります。
そして、【次の図】に示すとおり、対世界・大型割安株式で考えるとき、現在の相対PER(約2.3倍)だと、米国・大型成長株式は世界・大型割安株式に対して年率で5%程度、リターンが劣っても不思議ではありません。
また、【次の図】に示すとおり、対世界・中小型株式で考えると、現在の相対PER(約1.9倍)だと、米国・大型成長株式は世界・中小型株式対比、年率で5%~10%程度、リターンが劣っても不思議ではありません。
本稿のまとめ
『マグニフィセント7』を中心とする米国・大型成長株式の割高感が強まっており、たとえ長期間の投資でも、期待リターンは低く留まる可能性があります。
米国・大型成長株式の投資には、①短期投資と覚悟して利益確定のタイミングを見つけるか、②長期間の時間分散が必要でしょう。
米国・大型成長株式よりも期待リターンが高い株式への分散投資が、ポートフォリオの期待リターンや運用効率を改善させる可能性があります。
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