1月27日(土)・28日(日)の2日間、SBIアートオークションによる現代アートのオークションが、代官山ヒルサイドフォーラムで開催された。これまでのSBIアートオークションでは、金・土曜日での開催が主だったが、今回は土・日曜日とスケジュールを変更しての開催となった。
奈良美智作品の好調続く
本セールでは、国内外の作家248名(他作家・共作出品、グッズは1名でカウント)、498点の作品が競りにかけられた。2日間の落札総額は10億1504万7500円(落札手数料含む・以下同)を記録した。落札率は92.0%に達し、活気に満ちたセールとなった。
1日目は、落札予想価格平均290~450万円程度の作品が197点出品された。オリジナル作品が若干多く出品され、単日の落札総額は8億9567万7500円、落札率は92.0%を記録している。
通常、現代美術を中心に作品構成されているが、今回のセールでは中盤に近代美術の作品が構成され、9点の優品が出品された。落札予想価格7000万~1億円で出品されたルノワールの6号サイズの油彩・キャンバス作品は残念ながら不落札となってしまったが、シャガールやビュッフェなどの作品は順当に落札されている。
2日目は、落札予想価格平均20~40万円程度の作品が301点出品された。1日目より購入しやすい価格帯の作品が数多く出品され見応えのあるセールだった。単日の落札総額は1億1937万円、落札率は前日と同じ92.0%を記録している。最高額で落札されたのは、オークションカタログの表紙を飾った奈良美智の作品。こちらを睨みつけるような少女をモチーフにした作品LOT.090《Fuck You(No.YNF2107)》(84.0×59.0㎝、アクリル、色鉛筆、紙)は、落札予想価格上限である9000万円を上回る1億3225万円で落札され、会場を盛り上げた。奈良は他にマルチプル作品3点、グッズ1点の出品があったが、いずれも落札価格内~上限を超えて落札されている。世界的にも高く評価されている奈良の好調は続く。
新進気鋭の若手作家に予想超える落札続く
今回は、友沢こたお(ともざわ・こたお、1999-)にスポットを当てる。東京藝術大学美術学部絵画学科油画専攻で学び、2019年度久米賞受賞、2021年度上野芸友賞の受賞歴を持つ。個展、グループ展への参加の他、ギャラリーやアートフェアで作品を発表している。艶のあるスライム状の物質を自身の顔や“ルキちゃん”と名付けた人形に被せたモチーフを油彩で描き、その独特なモチーフと巧みな表現力で注目を集めている。
今回のセールでは、1日目にオリジナル作品2点、2日目に版画作品1点の計3点が出品され、いずれも落札予想価格上限を超えて落札されている。1日目に出品されたルキちゃんの全身像、顔だけに赤いスライムを被せた作品LOT.145《slime XXXVII》(162.0 × 130.3 cm、油彩・キャンバス)は、落札予想価格200~300万円のところ、予想価格上限の4倍程度となる1207万5000円で落札された。
続くLOT.146《Slime LIII》(65.2×53.0㎝、油彩・キャンバス)、 ルキちゃんの顔に白いスライムを被せた作品は、落札予想価格100~150万円のところ、414万円で落札されている。本作と類似モチーフで近似サイズの過去の落札データを抽出したACF美術品指標から動向を読む。
2023年1月の出品では、落札予想価格100~150万円のところ、予想上限の4倍となる600万円程度で落札されている。友沢の作品は、2022年9月に3号サイズの油彩・キャンバス作品が初出品され、落札予想価格上限である30万円を大きく上回る391万円で落札という好結果を残している。2023年1月の出品は、3回目の出品ということで高い関心が寄せられていたことがうかがえる。その後、落札価格は400万円前後に落ち込むが、落札予想価格上限の2~3倍で安定して推移している。
好調な結果を受け、今後の落札予想価格が上昇する可能性もでてきた。近年マーケットを賑わす新進気鋭若手作家の更なる活躍が期待される。
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※次回のSBIアートオークション開催予定は3月9日
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