3日に発表されたQUICK月次調査<債券>の5月調査では、市場が日銀の追加的な政策修正に対して警戒的となり、さらなる金利上昇を見込む向きが増えている様子が窺えた。
市場が最も注目している債券価格変動要因として、「短期金利/金融政策」が5月調査では88%と、4月調査の70%からさらに上昇した。同項目の債券価格指数は23.9(4月28.5、中立は50)とさらに低下し、市場が日銀動向を債券価格の強い下落要因であると見ていることが示唆された。
今回の特別調査では、日銀金融政策についてアンケートが行われた。日銀の次の利上げ時期については、24年7月との回答が38%で最も多く、次いで24年10月との回答が32%となった。一方、政策金利上限(現在0.1%程度)の見通しは、回答中央値で24年末0.25%、25年末0.50%となった。今年のどこかで実際に利上げが行われたとしても、材料が出尽くしになるというよりは、来年に向けて利上げ期待が残存することが予想される。また、日本の中立金利については回答中央値が1.00%となった。市場予想通りに利上げが続いたとしても、当面の政策金利は市場の見込む中立金利を下回り続けることが示唆される。この間、緩和的な金融環境が持続することで、インフレ圧力が残存し続けるリスクも考え得る。
5月13日には、日銀が国債買入れの減額を行った。この主なねらいについて、回答で最も多かったのは「円安への対応」の65%、次いで「市場の反応の確認のため」の44%、三番目が「今後買入れ減額を進めていくサイン」の42%となった(回答は8つの選択肢より2つまで選択)。今後も円安圧力が燻ぶる場合には、国債買入れ減額が行われるとの見方が市場で強まると予想される。
今年の最高利回りについては、回答中央値で10年国債1.25%、30年国債2.40%となった。実績がこうした水準に近付けば、金利のピークアウトを見越して債券買い需要がある程度強まることも考え得る。ただし、今年の最高利回りの時期はいずれについても24年12月との回答が最多となった。市場が来年さらに金利が上昇するとの見方を持っている可能性も考え得る。金利低下が持続的となるためには、日銀の利上げや国債買入れ減額が打ち止めとなったと、市場が確信を強める必要があろう。
【野村証券 市場戦略リサーチ部 シニア金利ストラテジスト 小清水 直和】
調査は5月28~30日にかけて実施し、債券市場関係者122人が回答した。
QUICK月次調査は、株式・債券・外国為替の各市場参加者を対象としたアンケート調査です。1994年の株式調査の開始以来、約30年にわたって毎月調査を実施しています。ご関心のある方はこちらからお問い合わせください。>>QUICKコーポレートサイトへ