【NQNニューヨーク=川上純平】米連邦準備理事会(FRB)は6月11~12日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を開く。同会合では、政策金利を7会合連続で5.25~5.5%に据え置く公算が大きい。市場の関心は参加者の政策金利見通し(ドットチャート)と、会合後のパウエルFRB議長の記者会見に集まる。
市場では、FRBが示す年内の利下げ見通しは前回3月時点の3回から2回に減るとの予想が多い。物価上昇率がおおむね鈍化の方向にある中で「急いで利下げする必要はないということが示される」(エバコアISIのクリシュナ・グーハ氏)との見方がある。その場合、利下げの開始時期は9月になるとの観測が強まりそうだ。
FRB高官の間では、しつこいインフレ圧力が続く可能性を踏まえて早期の利下げに慎重な声が目立つ。物価上昇率が目標の2%に向かって減速を続けるとの確信を得る上で、今後の経済指標を見極める必要があるためだ。時間を稼ぐため、年内の利下げ予想を2回に減らすことは「理にかなう」(バンク・オブ・アメリカのマイケル・ゲイペン氏)とみられている。
もっとも、7日発表の5月の米雇用統計を受けてやや風向きは変わっている。就業者数や賃金の伸びが市場予想を上回り、労働市場は底堅いとの見方が改めて広がったためだ。
FOMCの結果発表前である12日の朝には、5月の米消費者物価指数(CPI)が発表される。市場では「強い雇用とCPIの組み合わせでFOMCの年内の利下げ予想が1回になる可能性がある」(UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのブライアン・ローズ氏)とみられている。
米金利先物の値動きから市場が織り込む政策金利予想を算出する「フェドウオッチ」によれば、米東部時間10日夕時点では年内の利下げ回数が1回になる確率は約40%と最も高い。とはいえ、2回になるとの予想(35%前後)に近い水準だ。CPIの結果を確認するまで、市場の織り込み度合いは流動的だろう。
パウエル議長はFOMC後の記者会見で「引き締め政策を機能させるためにさらに時間をかけるのが適切だと強調する」(モルガン・スタンレーのエレン・ゼントナー氏)可能性が高そうだ。インフレ圧力が十分に低下してきたことを示す経済指標が得られるまで、現状の政策金利を維持するという「忍耐」が必要だと訴えるとの予想が多い。
パウエル議長は、総じて「これ以上の利上げは必要ないが、利下げの緊急性もない」とのメッセージを市場に伝えるとみられる。5月のCPIが予想外に上振れした場合は早期の利下げに慎重な「タカ派」寄りの発言を迫られる可能性があるため、注意が必要になる。ギリギリまで予断を許さない日程とあって、金融市場はいつにも増して神経質な展開を強いられそうだ。