５日に発表された10月のＱＵＩＣＫ月次調査＜債券＞の金利見通し【問１】では、各年限の見通しとも前回の９月調査に比べて上方シフトしている。年限毎に見ると、２年金利の見通しは、10年・20年に比べ小さく、この傾向は９月調査と変わっていない。金融政策見通し【問８】（５）では、2025年６月末の政策金利見通し平均は0.53％（９月調査0.55％）、2025年12月見通しは0.69％（９月調査0.68％）となっており、１カ月前とほぼ同水準で、日銀の利上げペースの見通しは変わっていない。今回の調査最終日が、10月の金融政策決定会合の２日目と重なったため、金融政策決定会合の結果が織り込まれていない可能性はあるものの、総選挙の通過は市場参加者の金融政策見通しに影響を与えなかったようだ。

　２年債と20年債を比較すると、９月調査では１カ月先、３カ月先、６カ月先とも、スティープ見通しとなっていたが、今回の調査では、６カ月先見通しが概ねパラレルな見通しとなった。10月の2-20年スプレッドは拡大傾向となったが、スティープニングもそろそろ一服すると見られているようだ。【問８】（７）の来年度の国債発行計画予想では、中短期債は「増額」見通しが55％と最も多い一方、超長期債については「減額」見通しが48％と最も多い。需給懸念が続いている超長期債については、来年度の発行減額による需給改善期待が、スティープニング見通しを後退させているようだ。ただ、超長期債の発行見通しについては、「変わらず」とみている向きも38％となっており、見方は分かれている。

　【問８】（６）の衆院総選挙の影響予想では、「金利上昇」が52％、「横ばい」が42％となった。各野党の政策は財政拡大傾向であり、超長期債の増額見通しや金利上昇見通しにつながっているのだろう。財政拡大+金融緩和の「高圧経済」の継続は、消費者物価を加速させる可能性がある。また、日経平均株価は「上昇」予想が47％、ドル円相場は「円安」見通しが72％と最も多く、国内物価の上昇圧力になりやすそうだ。

　【問８】（１）の米国金融政策の見通しでは、2024年12月末4.57％（９月調査　4.49％）、2025年６月末4.00％（同3.92％）、2025年12月末3.62％（同3.52％）となり、９月調査に比べ、小幅に上方シフトしている。一方、【問１】の米金利見通しは、2024年11月末4.204％⇒2025年4月末3.927％と27.7bpの低下が見込まれている。９月調査（2024年10月末3.735％⇒2025年３月末3.579％、低下幅15.6bp）に比べると、金利水準は高いものの、先行きの低下幅が大きい。【問８】（２）の大統領選挙結果の影響では、金利上昇見通しが64％となっていること、【問８】（３）の米景気見通しでは、ソフトランディング55％、ノーランディング27％、リセッション18％（2023年９月調査比、ノーランディング・ソフトランディング見通しが増加、リセッション見通しが大幅に減少）と米国経済の見通しに懸念が少ないことなどを考えると、米国金利は相当程度大統領選挙の結果を織り込んでいるように見える。

　日米とも、選挙を経ての財政拡大となりそうで、今後もその傾向が続きやすいだろう。長期の国内消費者物価見通しは、概ね1.5％台での推移が続いているが、財政政策の方向性や金融緩和環境の継続、為替見通しを前提とすると、国内のインフレが加速する可能性も十分あろう。いつまでも財政拡大を続けることはできないと思われ、今後の為替・物価・金利動向には注意が必要だろう。

【ペンネーム：小山清幸】

　調査は10月29～31日にかけて実施し、債券市場関係者126人が回答した。

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