日本知財総合研究所 三浦 毅司
2024年下半期(7~12月)、東京証券取引所ではテクニカル上場を除いて44社が新規上場を果たした。
この44社を業種別にみると、最も多いのが、サービス業の14社、次いで、情報・通信業の13社で、この2業種で全体の約6割強を占めた。3位が小売業の4社、4位が精密機械の3社となっており、引き続き、サービス業、情報・通信業への集中が見られる。
■2024年下半期上場44社の業種分類
出所:QUICKデータに基づき日本知財総合研究所作成
1月8日終値時点の新規上場企業の時価総額は平均で719億円と、従来の平均と比べて大幅に増加した。これは、キオクシアホールディングス(1兆1051億円)、東京地下鉄(東京メトロ。9636億円)リガク・ホールディングス(2167億円)、タイミー(1380億円)など大型企業の時価総額が全体平均を押し上げた結果である。
業種別にみると、キオクシアホールディングス、東京メトロがそれぞれそのまま平均となる電気機器、陸運業が突出した。
上場数が多い業種をみると、2024年上半期と比較すると、サービス業の平均時価総額が263億円とほぼ倍になったのに対し(2024年上半期は133億円)、情報・通信業は105億円と減少した(同139億円)。
■2024年下半期新規上場企業の業種別時価総額平均(1/8終値)
出所:QUICKデータに基づき日本知財総合研究所作成
【公開特許出願件数トップはキオクシアHD】
2024年下半期新規上場44社のうち、社名で特許出願が確認できたのは24社であった。その中で圧倒的トップはキオクシアを傘下にもつキオクシアホールディングスで3055件、2位が株式会社リガクを傘下に持つリガク・ホールディングスで335件、3位が東京メトロの74件となっている。
■2024年下半期新規上場企業の公開特許出願件数(国内)
出所:PatentSQUAREに基づき日本知財総合研究所作成
特許の出願件数のトレンドを見ると、トップのキオクシアホールディングスは2022年に特許出願数を前年の約3倍に急増させるなど、高水準の特許出願が続いており、研究開発に一定の実績を残していると評価できる。
2位のリガク・ホールディングスも特許出願件数は概ね増加傾向にあり、積極的な研究開発が評価できる。3位の東京メトロはコンスタントな出願を続けている。
■保有特許上位8社の特許出願件数推移
出所:PatentSQUAREに基づき日本知財総合研究所作成
【タイミー、時価総額に見合う技術開発が急務】
保有する特許のうち評価の高い有力特許の評価を、代表的な特許評価手法であるKKスコアで行ったところ、トップがキオクシアホールディングス、2位がリガク・ホールディングス、3位がユカリア、となった。キオクシアホールディングス、リガク・ホールディングスはもともと研究開発型の企業で違和感はないが、注目すべきは3位のユカリアだ。有力特許を10保有し、KKスコアもリガク・ホールディングスに次いで高いにもかかわらず、時価総額が341億円にとどまっている。この技術力が評価されれば市場の評価も向上する可能性がある。
一方、KKスコアの評価が低いにもかかわらず時価総額が大きいのがタイミーだ。タイミーは時価総額に見合う技術開発が急務であり、今後、技術開発が進まなければ市場の評価が低下する懸念がある。
■特許保有が確認できる23社の特許件数とKKスコアとの関係
出所:PatentSQUAREに基づき日本知財総合研究所作成
(2025年1月14日)
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