1月20日の就任以来、トランプ大統領は大量の大統領令署名や誰も予想しなかった発言で米国および世界を揺さぶっている。大統領動向ニュースに付されているロゴのFIRST 100 DAYSはハネムーン期間として新大統領への批判や性急な評価を避ける紳士協定を意味するが、政治指導者や記者たちの非難が渦巻き、まさに死語と化している。
10日に発表された2月のQUICK月次調査<株式>で、トランプ政権の運営が経済状況に今後どのような変化をもたらすか問うたところ、「インフレを制御しながら軟着陸する」が49%の支持を得て、高インフレ・景気減速(14%)や経済失速(25%)を大きく上回った。回答者は、「無茶ぶり」に見えても支持者層を失望させないようインフレ制御に本気で取り組むと予想しているのか、それとも単なる希望か。
次の図はトランプ政策が日米の株式市場に与える影響を短期(今年年末まで)と長期(4年後の政権任期末まで)で問うた結果である。短期的には米国株式にはプラスで日本株式にはマイナスと見ている回答者が多い。一方、長期的には日米ともプラス、マイナス、変わらないに分散している。トランプ政策の実現可能性や効果に関する不確実性がいかに高いかを表している。
また、今回の調査ではフジ・メディアHD問題において何が最も問題かも複数選択で聞いた。結果は次の表のとおりで「元経営トップが長年、取締役として残留」の55%が最多だった。米系ファンドが退任を要求している「独裁者」を指しているのは明らかだが、他の20%を超える支持を得た選択肢もすべて同根だろう。取締役・経営陣が一人の顔色を窺うことに終始し、従業員などのステークホルダーや株主・投資家への責任を軽視してきたと思われる。
1月17日の閉鎖的な社長会見の後、スポンサー企業からのCM差し止めが殺到し、3日で75社に達した。これはフジテレビでCMを流すことで消費者向けのイメージ低下を懸念した面もあるだろうが、フジテレビには深刻な人権問題がある疑念が生じたからではないだろうか。今や企業はパーパス経営で、投資家は責任投資で、単に財務リターンを追求するだけではなく社会的リターンも同時並行で追求しウェルビーイングの世界を目指している。その中で人権尊重は不可欠な要素で、自社および取引先での人権侵害には厳しく当たる方針を宣言している。こうした考え方は多くの企業・投資家に浸透・定着してきていて、ESG投資に否定的なトランプ政権下でも逆流することはないだろう。
【ペンネーム:浪小僧】
調査は2月4日~2月6日にかけて実施し、株式市場関係者130人が回答した。
QUICK月次調査は、株式・債券・外国為替の各市場参加者を対象としたアンケート調査です。1994年の株式調査の開始以来、約30年にわたって毎月調査を実施しています。ご関心のある方はこちらからお問い合わせください。>>QUICKコーポレートサイトへ