外国為替市場で、当面、一方的な円安には歯止めがかかりそうだとの見方が広がっている。QUICKと日経ヴェリタスが共同で実施した2月の月次調査<外為>で、トランプ米大統領の就任から100日後にあたる4月末の為替相場を聞いたところ、就任時の水準である1ドル=156円を超える円安進行の予想は11%にとどまった。
一方、「円高方向」は65%、「おおむね横ばい」は24%で、合わせて89%に達した。
農林中金総合研究所の南武志氏は「米国のインフレへの警戒感は根強く、円安圧力は高い状態が続く可能性があるが、日銀の利上げ継続方針が示されており円安圧力は解消していく」と指摘する。日銀の利上げペースが早まれば「円高気味の展開も想定される」とみる。
日銀は今回の利上げ局面でどの水準まで金利を引き上げるか聞いたところ、「1.00%」が50%で最多だった。日銀は1月の金融政策決定会合で政策金利を0.5%に引き上げた。日銀の田村直樹審議委員が「2025年度後半には少なくとも1%程度まで短期金利を引き上げることが必要」と述べ、市場では追加利上げの織り込みが進んでいる。
米連邦準備理事会(FRB)の利下げ局面はどこまで続くか聞いたところ、現状の水準(4.25~4.50%)から0.25%の利下げ3回に相当する「3.50~3.75%」との予想が23%だった。2回利下げ、4回利下げとの回答もそれぞれ20%あり見方が割れた。「トランプ氏の政策次第で利下げ回数は流動的になる」(証券会社)との声があった。
4会合連続で利下げを実施している欧州中央銀行(ECB)は「2.00%」まで利下げを継続するとの見方が47%で最多だった。現状の「2.75%」から3回の利下げに相当する。4月末のユーロ相場(対ドル)は「ドル高方向」との予想が58%を占めた。「おおむね横ばい」も35%あった。欧米の利下げペースの違いから金利差がじわりと開く可能性が意識されている。
トランプ政権の政策で為替相場に最も影響を与えるもの(2つ選択)を聞いたところ、「輸入関税の引き上げ」が86%だった。1月調査(84%)に続き最多だった。トランプ大統領は1日にメキシコとカナダに25%の関税、中国に10%の追加関税を課す大統領令に署名した。カナダとメキシコは首脳間の合意で1カ月の延期が決まったが、中国に対しては予定通り関税を引き上げた。
住友商事グローバルリサーチの鈴木将之氏は「トランプ政権の関税政策がいったん出尽くし全体像が見えるまでは、為替相場は変動する場面が多いだろう」と話す。2位は「ドル高の是正」(37%)、3位は「FRBの金融政策への関与拡大」(25%)だった。
調査は2月10~12日に実施、金融機関や事業会社の外為市場関係者67人が回答した。
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