【QUICK Money World 辰巳 華世】証券取引所に上場していない未上場株式(「非上場株式」「未公開株式」「非公開株式」とも呼ばれる)への投資は、かつては機関投資家や富裕層など限られた投資家が享受できる特権でした。近年では未上場株式に投資する手段が増えたこともあり、個人投資家の関心も高まっています。その手段のひとつとして注目を集めるのが「クロスオーバーファンド」です。本記事ではクロスオーバーファンドの特徴やその魅力について詳しく解説します。
垣根を越える投資、「クロスオーバーファンド」とは?
クロスオーバーファンドを説明する前に、まずは「クロスオーバー投資」の概念を理解しておきましょう。クロスオーバーは「垣根を越えて異なる要素が交じり合うこと」という意味を持ちます。従って、クロスオーバー投資とは「上場株式と未上場株式の垣根を越えて投資すること」を指します。
未上場株式への投資は、その企業の成長を遂げる可能性を見越して、上場前の早い段階から「先回り買い」をすることになります。将来的に企業の価値が大幅に向上すれば、大きな利益を得ることが期待できます。
一方、未上場株式への投資には、情報の不足や株式の流動性の低さなど、上場株式への投資よりもリスクが伴います。企業が成長する前なので、経営基盤や財務体質なども脆弱と言えます。
上場株式と未上場株式を組み合わせ、リスク分散を図りながら、リターンの最大化を目指すのがクロスオーバー投資です。そのクロスオーバー投資を実践するファンド(投資信託)を「クロスオーバーファンド」と呼びます。
ベンチャーキャピタルやクラウドファンディングとの違いは?
未上場株式への投資の代表的な存在として、未上場の新興企業(ベンチャー企業)株式への投資を専門とする「ベンチャーキャピタル(VC)」があります。個人投資家もVCが組成するファンド(投資事業組合など)を通じて未上場株式に投資できます。
もっともVCファンドは最低投資金額が数百万~数千万円程度に設定されることが多く、投資できる個人は起業家らを支援するエンゼル投資家や、富裕層などに限られているのが実情です。国内公募のクロスオーバーファンドでは1000円から購入できるファンドが登場するなど、VCと比べて少額から投資が可能です。
少額から投資できる手段としては「株式投資型クラウドファンディング」があります。特定の企業に直接投資することになるため、クロスオーバーファンドよりも「ハイリスク・ハイリターン」と言えます。またクロスオーバーファンドは企業分析などの専門家が複数の企業に分散投資しますが、クラウドファンディングは自分で企業を調査・分析し、投資を判断しなければなりません。
ルール改正で個人も公募ファンドを通じた未上場株式投資が可能に!
投資信託協会が2024年2月に自主規制ルール(「投資信託等の運用に関する規則」)を改正し、国内公募ファンドが投資できる対象資産に未上場株式を追加しました。上場株式と未上場株式の両方に投資するクロスオーバーファンドが登場したことで、個人投資家は公募ファンドを通じた未上場株式投資が可能になりました。
米国ではファンドやクラウドファンディングなどを通じた個人投資家の未上場企業への投資が盛んです。日本でもファンドを通じて未上場株式に投資することができるようになり、投資家のすそ野が広がることが期待されています。結果として、未上場の新興企業などが資金を調達する環境も改善すると言えます。
未上場株式の組み入れ上限は15%
投信協の自主規制ルールは、公募ファンドが未上場株式を組み入れる場合、原則としてファンドの純資産総額の15%が上限と定めています。未上場株式は市場価格がないため、客観的かつ合理的な方法で評価し、その手法や結果を投資家に適切に開示するなど「評価方法の明確化」、ファンドマネージャーが流動性リスクを適切に管理する体制を整備し、必要に応じて信託財産留保額の設定や解約制限の導入などの措置を講じるといった「流動性リスクの管理強化」も求められます。
また未上場株式への投資に伴うリスクや評価方法、流動性リスク管理の方針などを投資家に対して詳細に開示することが義務付けられています。ファンドの販売会社は、投資家の知識、経験、財産の状況、投資目的などを十分に把握し、未上場株式を組み入れたファンドが適切であるかを判断する責任を負います。運用会社は、未上場株式の評価や流動性リスク管理に関する専門的な知識と経験を持つ人材を配置し、適切な内部管理体制を構築しなければなりません。
未上場株式への投資は、上場株式と比べると、リスクを伴います。クロスオーバーファンドは上場株式と未上場株式を組み合わせることでリスク分散を図っているとは言え、投資に当たっては、そのリスクを理解しておくことが大切です。
クロスオーバーファンドを紹介!
ここでは、未上場株式に投資する代表的なクロスオーバーファンドを紹介します。
まとめ
クロスオーバーファンドは、上場株式と未上場株式の垣根を越えて投資し、リスク分散を図りながら高いリターンを目指します。未上場株式への投資は、これまで機関投資家や富裕層などに限定されていましたが、クロスオーバーファンドの登場によって、個人投資家も手軽に投資できるようになり、関心が高まっています。
ただし、未上場株式への投資は上場株式よりもリスクを伴うため、いくら分散投資していると言っても、そのリスクを理解しておくことが大切です。
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