国際商品市場で原油相場が急伸した。中東の産油国リビアでの原油パイプラインの爆発を受け、供給不安が高まった。ニューヨーク(NY)原油先物が2年半ぶりに1バレル60ドルの大台を突破したことで、2018年は石油輸出国機構(OPEC)がこれまで続けてきた減産の「出口戦略」に動くとの観測も浮上している。
WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物
リビアの原油パイプライン爆発は武装集団によるもので、日量で最大10万バレルの供給が失われるとみられる。OPECの月報によると11月のリビアの産油量は97万バレルで最大でも1割程度の減少と影響は少ないようにみえる。だが、爆破されたとなれば復旧には相当の時間を要するため、影響の長期化が懸念されている。
最近では米国がエルサレムをイスラエルの首都と認めたことに対してイランが反発するなど中東情勢は油断ならず、地政学リスクがにわかに高まった。北半球での冬場の暖房向け需要も重なって需給の引き締まり観測が広がり、NY原油先物は26日に一時1バレル60.01ドルと、約2年半ぶりの高値を付けた。中東に近い国際指標である北海ブレント先物は67ドル台まで上昇した。
相場急伸を受け、18年に向けては「OPECが減産政策の『出口戦略』を始める」(フジトミの斎藤和彦チーフアナリスト)との観測が出ている。OPECはロシアなど他の産油国とも協調しながら足元で計日量180万バレル程度の減産をしている。今年11月の定例総会でも減産を18年末まで延長することで合意した。だが同総会で示唆した18年6月総会での政策見直しが、急速に現実味を帯びてきた。
米国産のシェールオイル輸出は増加しており、相場回復でさらに生産が増える可能性が高い。米産シェールとのシェア争いを見越し、中東産油国で減産ムードが低下するのは避けられそうにない。
政策見直しとなれば各国の減産幅をどの程度縮小させるか調整が難しいため、減産継続か打ち切りかの2択となる可能性が高い。石油天然ガス・金属鉱物資源機構の野神隆之主席エコノミストは「来年6月の総会で減産打ち切りを決めるにしても『1年後をめど』などと時間軸に余裕を持たせる可能性が高い。だが、政策転換に伴う相場の急落リスクには警戒が必要だ」と話す。
OPECと市場との対話は難しさを増しており、足元の上昇基調を長期的に保つのは容易ではなさそうだ。【日経QUICKニュース(NQN) 尾崎也弥】
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