QUICKは「アジア特Q便」と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は台湾の現地記者、李臥龍(リー・ウォーロン)氏がビットコインなど仮想通貨と半導体需要の高まりについてレポートします。
世界中で仮想通貨のマイニング(採掘)熱が高まり、台湾の半導体メーカーに新たな活力を与えている。
消息筋の情報によると、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業グループが世界初となる仮想通貨の商業銀行の設立を計画している。ビットコインの中国マイニング最大手、ビットメインも別の仮想通貨イーサリアム向けの新たなマイニングマシンの発売を予定している。
こうしたマイニング熱は、特定用途向けの半導体集積回路(ASIC)の受託生産を手掛ける台湾積体電路製造(TSMC)やメモリー製造の晶豪科技、愛普科技、ASIC設計の創意電子といった企業に大きな商機をもたらしている。
仮想通貨の価格が足元でいくら激しく変動してもマイニング熱は一向に衰えず、この分野に参入する半導体企業は増える一方だ。
マイニングマシン市場では中国のビットメインが世界市場シェアの80~90%を握るベンチマーク的なトップ企業だ。
マイニングマシンの機能向上に向けて、同社は今年、TSMCにウエハー10万枚を発注。使用する半導体製造プロセスを当初の回路線幅16ナノメートル(ナノは10億分の1)から12ナノメートルに微細化した。TSMCの最先端技術となる7ナノメートルにする可能性もあるという。
また、ビットメインは智原科技にマイニングマシン向けASICの設計を委託するとともに、サムスン電子のウエハー受託生産部門で生産を行う。こうした動きは仮想通貨に携わる企業が依然として旺盛な市場開拓意欲を持っていることを示す。
ビットメインはライトコインなど仮想通貨専用ASIC半導体を有する。また3年前からTSMCと提携している。昨年は業績が急速に伸び、中国のIC設計企業トップ5に躍進。同時に、TSMCの主要顧客5社に入り、同社の昨年の売り上げの10%を占めた。
ビットコインはマイニングの難度がますます高まる一方、大量の電力を消費する。このため、ビットメインは事業の主軸の一部をイーサリアムに置く方針を固め、今後の需要に備えて次世代マイニングマシンを発売するもようだ。
ビットメインが近く発売するイーサリアム向けマイニングマシンF3は、DRAM全体のバス幅を拡大させると同時に、メモリー搭載量を増やした。今後、マイニングマシン1台につきマザーボード3枚を搭載。マザーボードには1枚当たりマイニング専用ASICプロセッサ6個が装備され、このASICプロセッサに1GBのDDR3が32個含まれる。
1台当たりのマイニングマシンF3は72GBのDRAMメモリーを搭載する計算だ。512MBのDDR3メモリーを搭載するビットコイン向けS9型マイニングマシンと比べ数百倍の規模となる。マイニング熱がビットコインからイーサリアムへと広がりを見せるなか、市場では、TSMCやサムスンにマイニング用ICの巨大な注文がもたらされる一方、現時点で品薄状態にあるDRAM産業の品薄感が一段と強まり、価格上昇期間も長引くとの予測が出ている。
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