【NQNロンドン 菊池亜矢】半導体製造装置大手、オランダのASMLホールディング株が下落基調だ。7月5日に一時、2021年末に比べて43%安い403.45ユーロまで下落し、21年1月以来の安値を付けた。足元でも440ユーロ前後で推移する。インフレやサプライチェーン(供給網)の混乱、金融引き締め加速による世界経済の不透明感が先行きの半導体需要への懸念を強め、株価を下押している。
ASMLは半導体に回路パターンを形成する露光装置を製造・販売する。最先端の極端紫外線(EUV)を使った露光装置を開発し、半導体の微細化をけん引してきた。
22年1~3月期の売上高は前年同期比19%減の35億3400万ユーロで、会社予想(20~24%減の33億~35億ユーロ)の上限付近だった。純利益は48%減の6億9500万ユーロ。EUV露光装置の販売台数が前年同期の7台から3台に減ったのが響いた。ただ、出荷台数は前年同期と同じ9台で、これらが22年4~6月期に売上高に計上される見通しだ。会社は22年4~6月期の売上高を27~32%増の51億~53億ユーロと見込む。
ただ、足元では半導体需要の減速懸念が強まっている。主要顧客である半導体受託生産の台湾積体電路製造(TSMC)の6月の売上高は前年同月比18.5%増と、前月の65.3%増から大幅に鈍化した。米調査会社IDCは「5G関連やゲーム機など消費者向け市場は22年10~12月期までに減速し始め、世界の半導体売り上げは全体として緩やかな成長になる」と予想した。半導体需要が減速すれば製造装置の販売にも響く。
コスト増への不安もある。ASMLのロジャー・ダッセン最高財務責任者(CFO)は22年1~3月期決算の説明会で、人件費や材料費、輸送費の増加に触れ「22年12月期通期の売上高総利益率(粗利益率)を1%程度押し下げる」と説明した。通期の粗利益率は、前期(52.7%)を下回り、52%に近くになるという。22年1~3月期の粗利益率は49.0%と6四半期ぶりに50%を割り込み、販管費は前年同期から24%増え、コスト増による利益圧迫への警戒感は強い。
一段の微細化が求められる半導体業界においてEUV技術を持つ同社の優位性は変わらず、中長期的な成長期待は続いている。ただ、業績を巡る悪材料が重なり、目先の株価上昇は見込みにくい。