【NQN香港=川上宗馬】半導体受託生産で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)の株価が反発している。14日の取引終了後の4~6月期決算発表に伴い、経営陣がコメントで「(リーマン・ショック時である)2008年のような大きなダウンサイクルにはならない」との認識を示し、株式市場で買い安心感につながった。半導体市況の急激な悪化への警戒感が強まるなか、その先を見据えて買いに動く投資家も出始めているようだ。
TSMC株は15日の台湾市場で一時、前日比19.00台湾ドル(4.0%)高の494.00台湾ドルまで上げた。年初来安値433台湾ドルを今月5日に付けてから反発しつつある。4~6月期決算は純利益が前年同期比76%増の2370億2700万台湾ドルとなり、QUICK・ファクトセットがまとめた市場予想(2202億1600万台湾ドル)を上回った。台湾ドル安が追い風となり、売上高総利益率は59.1%と、前四半期(55.6%)から3.5ポイント改善した。
7~9月期の売上高見通しは198億~206億米ドルと、中央値で4~6月期から11%程度の増加となる。インフレの加速による原材料コスト増などが押し下げて、売上高総利益率は57.5~59.5%と中央値で4~6月期から悪化する見込みだ。
これまで不足感が強まっていた半導体だが、足元で供給過剰に転じるとの懸念が急速に強まっている。TSMC株は今月5日の安値まで年初からほぼ3割下落していた。TSMCは14日の決算会見で、顧客が在庫水準の削減に動き始めており、23年上半期にかけて在庫調整が進むとの見方も示した。22年の設備投資は、一部が23年にずれ込むため、400億~440億米ドルとしている計画レンジの下方で着地する見通しだ。
経営陣によるリーマン・ショック時ほどの落ち込みには至らないとの認識や、市場予想を上回る7~9月期の売上高見通しを受け、投資家の過度な懸念が後退し、株価の反発につながっている。