外国為替市場で円相場やユーロの対ドル相場といった主要な取引ペア(組み合わせ)の変動率が低くなってきた。トランプ米大統領がアルミニウムや鉄鋼の輸入制限で例外をもうけるなど寛容な姿勢を見せ始めたのに加え、国有地売却の決裁文書を巡って激震が走る国内でも麻生太郎財務相が自らの辞任を否定したことで金融・資本市場の緊張がひとまず和らいだためだ。低い変動率を好むHFT(コンピューター経由の高頻度取引)が拡大し、レンジ形成を促す流れになっている。
将来の為替レートを予測する通貨オプション市場で、円相場とユーロの対ドル相場の予想変動率は13日9時時点で1カ月物がそれぞれ7%台後半、6%台後半と、前月2月の米株価急落時などに付けたピークの10%台半ばと9%台後半よりも3%程度低い。
■円相場と対ドル円相場の予想変動率
2月の米株安のきっかけの1つだった米金利上昇への警戒感も足元では緩んだ。米株式投資家の不安心理を測る指標とされるVIX(変動性指数)は前日12日の終値が15.78と、2月に40を一時超えていたのに比べればだいぶ落ち着いている。
HFTはマイクロ秒(100万分の1秒)以下の単位で小刻みに売り買いを繰り返す。値動きは狭ければ狭いほど都合がよく、水準はあまり関係がない。いったん取引規模が膨らめばそこで売買が交錯し、相場は膠着感を強めていく。もし円高・ドル安方向でHFTが席巻すれば、円は高値圏に定着することになる。
VIX安定が映す投資家のリスク選好回復は本来、日本から欧米などへの資金シフトを促すはずだが、国内では学校法人「森友学園」を巡って政治状況が緊迫。「国会空転の長期化や内閣支持率の低下で安倍晋三政権とアベノミクスが動揺すれば株安・円高に発展する」(SMBC日興証券の野地慎・チーフ為替・外債ストラテジスト)との懸念が消えていない。
国内の機関投資家は年度末でもあり、新規の外債運用には及び腰のようだ。半面、世論調査の結果が厳しくなるまでにはタイムラグが生じると考えられる。
JPモルガン・チェース銀行の佐々木融・市場調査本部長は「海外ではまだ森友問題を深刻にはとらえていない」と話す。麻生財務相が前日、自らの進退について「考えていない」と答えた影響もあるのだろう。逆に麻生氏の辞任が現実味を帯びてきた場合には、HFTがレンジ前提のディーリングから撤退し、相場が大きく振れる展開が予想される。
【日経QUICKニュース(NQN ) 今 晶】
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