外国為替市場で円高・ドル安基調が続いている。15日の東京市場では一時1ドル=105円79銭近辺と約1週間ぶりに105円台へ上昇した。株式相場の底堅さなどを支えに円売り・ドル買いを仕掛けてきた投機筋が、ここへきて円売りを中断。日米の政治リスクへの警戒感の強まりを映す形で、逆にドル売りの持ち高を形成し直す動きが出ている。
15日、市場参加者の間では「きょうは海外勢の円買い・ドル売りの動きが目立つ」との声が多く聞かれた。トランプ米政権が中国に対して強硬姿勢を強めるとの警戒感が強まったことが要因だ。国内の学校法人「森友学園」への国有地売却問題を巡っても、新たな材料が出たわけではないものの「政治情勢の安定感で定評がある日本で、政権が傾く可能性が浮上したということを、海外勢が意識し始めた」(りそな銀行の井口慶一・市場トレーディング室クライアントマネージャー)との声が出る。
野村証券の高田将成クオンツ・ストラテジストは「14日のニューヨーク(NY)の取引時間帯で、投機筋が円売り・ドル買いから円買い・ドル売りに転じたようだ」と指摘する。米政治の不透明感に加えて最近の小売り統計で弱めの結果が続いていることも材料となった。NY市場での対ドルの円の安値が106円59銭と、東京市場で付けた106円75銭に届かなかったのをきっかけに「市場心理は弱気、円相場は上昇方向」との判断に傾いた。
とはいえ現時点ではまだ、米経済の悪化懸念が急速に強まったわけではない。日米の政治問題も決定打に欠ける。全面的にリスク回避という状況にはなっておらず、円が105円突破を視野に一段と上昇するには「悲観的な見方が強まるような追加材料が必要」(国内証券)となる。
19~20日の20カ国・地域(G20)財務相・中銀総裁会議では米国の保護主義的な政策が議論され、「米国批判が出る可能性がある」(みんかぶの山岡和雅チーフストラテジスト)。20~21日には米連邦公開市場委員会(FOMC)も開かれる。投機筋を再び円売り・ドル買いに方針転換させる材料が出るか。日米の政治・経済の両面に目配りしながらもうしばらく様子を見る必要がありそうだ。
【日経QUICKニュース(NQN) 蔭山道子】
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