拝啓、麻生太郎閣下
10年物国債の利回りを米国と日本で比較した長期金利差が約11年ぶりに3%を超え、外国為替市場で円安・ドル高が進んでいます。現時点では閣下が3月に国会で、「これまでの歴史をみると米国との金利差が3%に達すると必ずドル高・円安に振れる」とおっしゃった通りの展開です。ただ、市場のことですから例外は付き物と考え、筆を取らせていただきました。
日米の財務省と日銀のデータを1974年9月まで遡って調べたところ、80年や87年で例外がみつかりました。ちなみに日本には86年6月以前の10年債のデータがなかったので9年債で代用しました。
80年のケースでは3%を超えたのが2月。このときの円相場は1ドル=249円でした。その後、81年2月に金利差は5%に広がりましたが、円は208円に上昇しました。
当時はイランで革命が起きるなど中東が不穏な時代でしたね。原油高によるインフレ懸念が米金利を押し上げ、日米金利差が拡大したのは御承知の通りです。
特筆すべきは、この間、通貨の総合的な強さを示すドル指数(実効為替レート)も上昇していた点です。創意工夫で石油危機を乗り越えた日本経済の底力を評価した外国人の投資が急増し、ドル以上に円が買われた時代でした。まさに、日本にとって良い円高・ドル安だったのは驚きです。
逆に87年のケースは悪い円高・ドル安でした。米国の財政と経常収支の「双子の赤字」が一向に減らない中で、年初から米長期金利が急騰し、85年のプラザ合意から始まった円高・ドル安は一段と加速しました。3月に3%を超えた金利差は、12月に4%に拡大。この間、円相場は145円から122円に上昇しています。
レーガン政権による大幅減税や米国とイランの軍事対立など、当時といまは、どこか似たような空気を感じます。この年の10月には米株の大暴落「ブラックマンデー」が起きたのも気になります。
為替相場が水物なのはいうまでもありません。日米の金利差が大きく拡大しても、きっかけ次第で円高・ドル安に振れることはあります。釈迦に説法ですが、為替相場の変動に一喜一憂しないで済む経済力が身につくような財政運営が待たれます。
敬具
【日経QUICKニュース(NQN ) 永井洋一】
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