国際商品市場で、コンピューター経由で取引する商品投資顧問(CTA)が原油の買いを強めている。これに対しCTA以外の投機筋には既に売りに動いているところもあり、足並みがそろっていない。中東湾岸の産油国などが減産の手を緩めるとの観測が出ている中、市場では「CTAも近いうちに買い持ち高の解消に動き、原油価格を押し下げるのではないか」との思惑が広がり始めた。
野村証券の高田将成クオンツ・ストラテジストの分析によると、CTAの原油先物の買い持ち高は21日時点で2008年夏以来の高さになった。CTAは相場の流れに乗る傾向が強い。米国のイラン核合意からの離脱などを受けてニューヨーク原油先物が上昇し、22日に一時1バレル72.83ドルと14年11月下旬以来、およそ3年半ぶりの高値を付ける過程で原油の買いに大きく傾いたようだ。
一方、米商品先物取引委員会(CFTC)が18日に発表した15日時点の建玉報告で、投機筋をあらわす非商業部門の原油の買越幅は4週連続で減少していた。
CFTC報告はCTAのような「順張り」型だけでなく、重要なイベントごとに投資戦略をたてる「イベントドリブン」など様々なタイプの投機マネーの傾向を示す。野村の高田氏は「CTAは借り入れなどを通じて運用額を膨らませるレバレッジの比率が高い。自分たち以外の投資家が撤退し相場上昇のペースが鈍るとお金の余裕がなくなり、これまでのようには原油高トレンドを主導できない」とみている。
中東では緊張が高まっているとはいえ、現時点では産油に支障が生じているとの話は聞こえてこない。南米のベネズエラでは財政悪化を背景に原油生産が細っているものの、石油輸出国機構(OPEC)は6月の会合でこれまで続けてきた産油国による協調減産を緩和するとも伝わった。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの芥田知至・主任研究員は「サウジでは中長期的な需要抑制を見越して原油高を懸念するムードもある」と指摘する。
08年といえばNY原油が7月に1バレル147ドルと、史上最高値を付けた年だ。その後はリーマン・ショックによるマネー収縮と世界経済の減速懸念で急落し、12月にかけて30ドル台まで下げた。
18年の世界景気は今のところ堅調で、08年に比べると金融・資本市場のリスク管理体制も整っている。そう簡単に「ショック」は起こらないだろう。だが米シェールオイルの台頭により、08年に比べると需給はだいぶ緩みやすくなった。
足元の原油高がシェールの生産意欲を刺激し、米国の産油量は日量1000万バレルに達している。積み上がったCTAの買いは原油上昇の「終わりの始まり」を意味しているのかもしれない。
【日経QUICKニュース(NQN ) 尾崎也弥】
※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。