イタリア売りが止まらない。イタリア国債を売る動きが広がり、2012年の欧州債務危機の再来を危惧する声が高まっている。イタリア中央銀行のビスコ総裁は29日、イタリアの政局混迷が深まるなか、市場でイタリアに対する信任が失墜の瀬戸際にあると警鐘を鳴らした。
イタリアの再選挙は「早ければ7月29日になる」と一部では報じられており、同選挙がイタリアのユーロ圏離脱の是非を問う事実上の国民投票になり得るとの懸念がイタリア売りを加速させている。5月15日に-0.27%とマイナス圏にあったイタリアの2年物国債利回り(グラフ緑)は2.02%へと急騰した。
29日の株式市場でも主要指数は軒並み大幅安となった。イタリアのFTSE・MIB指数は前日比2.65%安と大幅に5日続落し、終値ベースで2017年7月24日以来10カ月ぶりの安値水準に沈んだ。STOXXヨーロッパ600指数は1.37%安。欧州版「恐怖指数」のVSTOXXは13.33%高の20.15と、4月4日以来およそ2カ月ぶりに投資家心理の不安感を示すとされる20の大台に乗せた。
スペインのラホイ首相の不信任決議の採決を6月1日に控え、IBEX35指数も2.48%安大幅安となり、4月4日以来の安値となった。サンタンデール銀が5.44%安、ウニクレディトが5.60%安、インテーザ・サンパオロが4.09%安となった。スペインやイタリアの金融株が急落し、STOXXヨーロッパ600銀行株指数は3.18%安の大幅安だった。
また、米国市場でWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物は大幅に5日続落。期近の7月限の清算値は1.69%安の66.73ドルだった。中心限月の清算値ベースで4月17日以来1カ月ぶりの安値となった。イタリアの政治リスクへの警戒感からユーロが売られ、ドル指数(DXY)が強含んだこともドル建てのコモディティ相場の重しとなった。原油版恐怖指数のOVXは4.61%高の29.04と大幅高となり、30の大台に迫った。(丹下智博、片平正二)
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