新型コロナウイルスの感染が広がっていたイタリアの国債に日本からマネーが流入していたことが明らかとなった。財務省と日銀による4月の対外・対内証券投資(指定報告機関ベース)によると、国内投資家による4月のイタリア債の買越額は3690億円と統計をさかのぼれる14年1月以降で最大となった。新型コロナの感染拡大による財政悪化懸念がイタリア国債の利回りを押し上げたことが、少しでも高い利回りを求める投資資金を呼び込んだ。
■イタリア国債の利回り
イタリアの10年債利回りは3月、欧州中央銀行(ECB)が中旬に量的緩和の拡大を決めた後、月末に1.2%台まで低下した。だが、そこから反転して4月下旬には2%を上回った。新型コロナによる危機対応で、欧州連合(EU)諸国の足並みがそろわず、イタリア債の利回り上昇につながった。北部欧州からの支援が得られず、イタリアの財政状態が一段と悪化するとの思惑が売りを促した。
そんななかで、国内勢が買いに動いたのは「相対的に利回りが高かったため」(ニッセイ基礎研究所の高山武士・准主任研究員)という。4月末時点の他の欧州の10年債をみると、ドイツはマイナス圏に沈み、フランスもゼロ%近辺にとどまっていたの対し、イタリア債の利回りは1.8%前後だった。
■「結局、ECBがなんとかしてくれる」
財政悪化への懸念が高まっても「結局、ECBがなんとかしてくれる」との安心感が国内投資家に買いの背中を押したようだ。実際、ECBは今月4日の理事会で、3月に打ち出した資産買い入れ枠の規模を従来の7500億ユーロに6000億ユーロ上積みすることを決めた。ECBが買い支えているとの安心感は一段と強まり、イタリア債利回りはここにきて1.4%台まで低下している。
5日発表の5月の米雇用統計が予想外の改善を示すと、リスクオンの流れが強まり、ドイツやフランスの債券が売られる一方、イタリア債相場は小幅に上昇した。まだ相対的に利回りの高いイタリア債は「サーチ・フォー・イールド」の格好の対象となっている。〔日経QUICKニュース(NQN)矢内純一〕