トランプ米政権が中国への制裁関税を発動し、中国も報復措置の発動を発表した。米中の貿易摩擦の着地点はみえない。6日の外国為替市場では短期的な材料が出尽くしたとの受け止めから円売りが優勢になったが、長い視点では米中摩擦は「低リスク通貨」とされる円への買いを誘うとの見方が広がる。米国は今月にも日本と開く通商協議で円高圧力をかけてくるのではないかなどと、米中摩擦が飛び火するとの懸念も出ている。
米国が発動に踏み切り、中国もすぐに反応した日本時間6日午後、円の対ドル相場は1ドル=110円80銭近くと前日17時時点に比べ10銭強の円安・ドル高となった。対中関税は先月には表面化していたため、外為市場では「米中の応酬は相場に織り込み済み」(あおぞら銀行の諸我晃総合資金部部長)との受け止めが広がり、それまでの円買い・ドル売りの持ち高をいったん解消する取引が増えた。
だが、米中の貿易摩擦の激化で円高圧力は高まるとの予想は多い。貿易量の減少などを通じてこれまで堅調だった世界経済を下押ししかねないとの不安が一つの背景だ。さらに米中間の摩擦の落ち着きどころがなかなかみえず、問題が長引きそうなのも気掛かりだ。
「トランプ米大統領は経済的な悪影響よりも政治的なアピールを重視している」(三井住友銀行の宇野大介チーフストラテジスト)との見方は多く、少なくとも11月の米中間選挙までは米国の強硬姿勢は続くとの予想が広がる。次の米大統領選での再選を目指して2020年まで米中の摩擦は続くとの思惑も浮上している。
世界の景気動向に敏感に反応しやすい日本経済には貿易摩擦の激化は直接響きかねない。影響は実体経済を通じたものにとどまらない可能性もある。日本と米国は新たな通商協議の枠組みで7月にも初会合を開く見通しだ。三菱UFJ銀行の内田稔チーフアナリストは「この場で米国が円高圧力をかけてくる可能性がある」と読む。
米国が韓国と今年3月に大筋で合意した自由貿易協定(FTA)の見直しでは、通貨安誘導を防ぐ為替条項が盛り込まれている。米国は日本に対しても通商協議で円高への圧力をかけるのではないかとの懸念がくすぶり始めている。
【日経QUICKニュース(NQN) 荒木望】