コモディティ相場で、チャート上大きく開いたワニの口が閉じ始めた。原油先物(グラフ紺色)と銅先物(グラフ茶色)価格のかい離のことだ。2017年12月末の値を100とした相対チャートをみると、原油と銅のかい離幅は7月10日に35まで広がっていたが、足元は28へと縮小した。本来、原油と銅はどちらも世界経済の動向に左右される商品。原油相場は米国によるイランへの経済制裁などにより供給懸念が強い一方、銅価格は世界経済の鈍化懸念を織り込んでいるとされる。
上顎(あご)にあたるWTIが下落
マーケット・リスク・アドバイザリーの新村直弘代表は「現在のところ貿易戦争への懸念を正直に映しているのではないか」と指摘する。銅に関しては世界各国で生産調整が起きている状況は少なく、最大消費国である中国の経済の伸び鈍化を映し出すという。そのうえ、米国との通商摩擦において中国の切れるカードが少ない点も影響としてあるとみられる。
世界経済の体温計である銅は売られ過ぎとの見方も少なくない。だが、自動車や電子部品、電線などあらゆる製品に使われる銅の下げが止まらない現状からすると、世界景気の先行きを示している可能性も高い。一方で原油は世界の物流や交通の流れも映し出す。閉じ始めたワニの口が一段と縮まるようならば他の金融市場においても影響は無視できない。
ある国内投信のストラテジストは足元の株式と商品相場の状況や通商摩擦の影響を鑑みながら「現在の株式相場は最後のユーフォリア(陶酔感)なのでしょうか」とつぶやいていた。商品相場から先行きを探るのもひとつのカギとなるだろう。(中山桂一)
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