14日のニューヨーク商品取引所(COMEX)で金先物相場は4営業日ぶりに小反発したが、1200ドルの節目を割り込む場面があった。一時、1198.6ドルをつけ、中心限月としては17年3月以来の安値となった。金価格(グラフ緑)はドルと逆相関の関係にある。ドルの総合的な強さを示すドル指数(DXY、グラフ青、逆目盛)は4日続伸し、前日比0.38%高の96.68と、17年6月以来の水準に上昇している。
この日の為替市場でトルコリラがドルに対して前日比で6%ほど上昇し、6.30リラ近辺までリラ高・ドル安となったことで世界同時株安が一服。リラに対してドル高が一服する一方、リスク・オンの展開で円安が進むなど、ドル高の流れが続いた。
米経済専門チャンネルのCNBCによればトルコリラは13日に1ドル=7.2362リラまで下げて史上最安値を更新した。8月に入ってから28%、年初来で40%下げていたせいか、自律反発の動きが出たもよう。13日にトルコ中銀がリラ防衛策を発表していたが、14日にはトルコの経済団体がエルドアン大統領に対して、通貨の安定のためには政策金利の引き上げが必要だと通貨防衛策の実施を要請した。英フィナンシャル・タイムズ紙電子版によればトルコの経済団体が政府に要請するのは珍しいといい、経済界の危機感がうかがわれた。
「トルコ情勢ばかりに焦点が当たりますが、結局はドル高進行の影響を見極める必要があるのではないでしょうか」――国内投信のストラテジストは金相場のチャートをにらみながらこう話す。
投資家は冷静にドルと金の逆相関をにらんでいる。米商品先物取引委員会(CFTC)によると、投機筋による金先物の買い越し幅は7日時点で1万2688枚と4週連続で縮小し、2年8カ月ぶりの低水準となった。足元はトルコ・ショックと冠がつく状態でも積極的に買いが入る様子もみられていない。
金は発行体リスクがなく、無国籍通貨としての側面を持つ。それだけに世界の金融相場が荒れる現状でも冷静に売られる金相場動向からはマーケットがドルに対する信頼感を示している状況といえる。ドルと金の逆相関が崩れた時こそ「要警戒」というバロメーターとして見ても良い状況かもしれない。(池谷信久、片平正ニ、中山桂一)
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