日経QUICKニュース(NQN)=編集委員 今晶
外国為替市場でトルコリラの対円相場が上昇している。29日の海外市場では一時1リラ=19円台半ばと4月中旬以来の高値を付けた。トルコ中央銀行は25日に政策金利である1週間物レポ金利を4.25%引き下げて19.75%としたが、低金利国の日本に比べ圧倒的に高い状態に変わりはない。しかも日本の個人投資家に深くかかわる「翌日物金利」はほとんど下がっておらず、リラの買い安心感を誘っている。
個人が手掛ける外為証拠金(FX)取引で利息収益に相当する「スワップポイント」は円とリラの交換取引である「為替スワップ」の動きに左右される。基本的には短期金融市場における翌日物の金利格差を反映し、一日あたりいくらで算出する。
だがここ数カ月のリラのスワップ市場では、「空売り」に目を光らせるトルコ規制当局によって金利が高めの水準に張り付いている。3月下旬、スワップを通じた翌日物のリラ調達コストが1000%を超えたのは記憶に新しい。中銀が利下げをし短期市場に影響が及んだとしてもおいそれとは下げられない構図になっている。
日本のFX会社が30日朝時点で提示しているスワップポイントにはばらつきがみられるものの、多いところでは1万通貨あたり100円前後でトルコの利下げ前とさほど変わっていない。利回りに換算すると年18%前後で政策金利よりも低い。スワップ市場の不透明さを背景にもともとスワップポイントを抑え気味に示していた会社は利下げ後に直ちに対応する必要がなかったと考えられる。
昨年8月に起きたトルコショックからまもなく1年。トルコ国内では中銀総裁の交代で独立性への懸念が再燃し、国外では中東情勢が混迷したままでリラ安の圧力はくすぶっている。そんな中でも、背に腹は代えられないとの切迫感から来るリスクをとった「金利志向」は根強いようだ。
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