日経QUICKニュース(NQN)=矢内純一
景気と支持率浮揚を狙って大統領が中央銀行に利下げを強要する構図は、洋の東西を問わないようだ。
エルドアン大統領によって7月上旬にチェティンカヤ総裁(当時)が更迭されたトルコ中央銀行は25日、金融政策決定会合を開く。22日にはロイター通信が更迭の理由として「6月に3%の利下げを総裁が拒否していたこと」を伝えた。利下げ見送りが更迭を招いたとあって、新しいウイサル総裁下での初めての会合は、利下げが確実視されている。
ロイターが関係者の話として伝えたところによれば、「中銀は6月に3%の利下げ、7月にも追加利下げを要求されていた」という。ただ、5月に消費者物価指数(CPI)の上昇率が前年比18.7%となり、中銀の目標(5%)を大幅に上回っていた。高インフレなどを背景にトルコ中銀は6月の会合で、主要な政策金利である1週間物レポ金利を年24%で据え置いた。インフレ率の高さから利下げは時期尚早と判断した。
景気浮揚のために金利を下げたいエルドアン氏と、物価上昇抑制のために高い金利を維持したいチェティンカヤ氏との溝はなかなか埋まらなかったようだ。6月下旬にはトルコ最大都市イスタンブール市長選の再選挙で、エルドアン氏が推す与党候補が大敗。高い金利が足かせとなり、経済活動の停滞を招き、支持を得られなかった面もある。エルドアン氏の矛先が中銀総裁に向いたのは、自然な流れだったのかもしれない。
エルドアン氏が後任のウイサル氏にも利下げを強いるとの見方は根強い。市場では「3%程度の利下げに踏み切るのではないか」(野村証券の中島将行・外国為替エコノミスト)との声がある。利下げの幅にばらつきはあるものの、トルコ中銀が25日の会合で利下げするとの予想が大勢だ。
ただ、仮に大幅な利下げに踏み切っても、トルコの通貨リラが大きく値を下げるとの声は少ない。投機筋にとっては「金利が高いため、空売りをしにくい通貨」(国内証券)である上、米連邦準備理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)が緩和バイアスを強めているため、主要通貨に対してリラ安が進みにくい状況にある。対円でも、6月以降のレンジである1ドル=18~19円台で底堅い動きが続きそうだ。
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