外国為替市場でトルコリラ相場が落ち着きを見せている。対円はここ2週間ほど1リラ=18円ちょうど前後で値幅が小さく、世界経済の先行き不透明感を背景にした投資家のリスクオフ(回避)局面でも粘り腰を見せた。トルコ政府が為替スワップ市場でリラを調達する際のコストを必要に応じて引き上げ、海外投機筋による「空売り」をけん制し続けているためだ。
リラの空売りが加速すれば当局はスワップ金利を一気に上げて投機資金を追い出そうとする。4月初旬には年率で1000%を超えた日もあった。
トルコの弱点はリラ安を防ぐための外貨準備が潤沢ではないとみられることだ。欧米ヘッジファンドなどは「不十分な外準」をよりどころにリラ売りのスタンスを変えていない。だがファンド勢が対ドルの為替スワップでリラを調達すれば市中にドルが戻る。トルコ政府は市中銀行からの借り入れでドルの「運転資金」をまかなえる。外準不足がすぐに深刻化する状況とまではいえない。
相場の変動率が低下すると金利差に焦点が当たりやすい。日本で外為証拠金(FX)取引を手掛ける個人投資家「ミセスワタナベ」のリラ買いも回復してきた。FX大手の外為どっとコムによると、リラの買い持ち高はトルコ政治の先行き不透明感が強まった6日にかなり減った後、しばらく停滞していたが前週後半ににわかに拡大。4月下旬以来の多さになった。
あるFX関係者は「トルコの金利水準がもともと高いだけでなく、当局のスワップ規制は投資家の金利収入に相当する『スワップポイント』の増加につながり得る点が認知されてきた」と話す。トルコの政治や経済を取り巻く環境は特に改善してはいないが、リラのスワップ市場の微妙な均衡が保たれているうちはミセスワタナベのリラ買いは続くのかもしれない。
【日経QUICKニュース(NQN ) 今 晶】
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