外国為替市場でシカゴに拠点を置く商品投資顧問(CTA)などの投機筋の姿勢が変化している。CTAは従来、世界経済の減速懸念から基軸通貨の米ドルと低リスク通貨の円を同時に買う戦略に傾いてきたが、トランプ米大統領による対メキシコ関税の表明などを受けて米景気の減速のほうをより意識し始めた。対ユーロなどでドルの買い持ち高を減らす一方、対円ではドル売りへの傾きを強めたようだ。
米商品先物取引委員会(CFTC)が5月31日に発表した28日時点のシカゴ通貨先物市場の建玉報告によると、投機筋をあらわす非商業部門の円の買い持ち高は21日時点よりも1700枚程度縮小していた。だがトランプ氏が31日、市場の意表をついてメキシコに追加関税を課す方針を示して以降、円が1ドル=108円台前半まで上昇する過程で円買いを急速に積みあげたとみられる。
■5月28日時点では円買い持ち高は縮小していたが……
(CFTCの円の対ドルポジション)
CTAによる米ドル買い意欲の後退は世界株安に対する新興国通貨の底堅さを演出し、対円のドル売りをアシストしている――。市場ではそんな指摘もあった。ドル安で新興国の高金利通貨の魅力が相対的に高まった結果、対円での新興国通貨の売りが鈍り、ドル売り・円買いが出やすくなっているというのだ。
例えばトルコリラの対円相場は5月30日に1リラ=18円台後半とほぼ1カ月ぶりの高値水準を付けた後、足元では18円台半ばとさほど崩れていない。相場の流れに逆らう「逆張り」で知られる日本の外為証拠金(FX)投資家も、リラに限れば利息収益狙いの長期保有のスタンスが目立つ。
CFTC統計によれば、シカゴ勢が5月28日時点で保有する円の売り持ち高は8万1380枚残っている。新規にドル売りを膨らませる戦略とあいまって円の買い戻しが進む展開になれば、円買いのエネルギーは一段と増すかもしれない。
【日経QUICKニュース(NQN) 編集委員 今 晶】
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