国内で外国為替証拠金(FX)取引を手掛ける個人投資家「ミセスワタナベ」によるトルコリラの需要が後退している。代表的な高金利通貨であるリラはミセスワタナベの重要な運用先だが、同国のエルドアン大統領による利下げ圧力が影を落とす。トルコ中央銀行の政策スタンスやトルコ国内の政治情勢の先行き不透明感などから買いを抑える動きが出てきた。
トルコリラの対円相場は6日の海外市場で一時1リラ=18円ちょうど前後と年初来の安値圏に沈んだ。トルコ最大の都市イスタンブールで市長選のやり直しが決まり、投機的なリラ売りを促したためだ。一方でこの日は、ふだんは相場の流れに逆らう「逆張り」の買いで臨むミセスワタナベの反応は鈍かった。
FX大手の外為どっとコムによると6日、リラの買い持ち高は前営業日の3日比で約5%減った。リラ買いは日本の10連休の直前である4月24日に急増した後は減少傾向で、6日の数字は1割程度細った計算になる。市場では「4月24日のリラ買いは25日にリラをすぐ売れば10日分の金利収入が得られるとの戦略からで、積極的に為替リスクをとろうとしたわけではない」との指摘が多い。
トルコ中銀は4月25日の政策声明で金融引き締めに関する文言を削った。折しもトランプ米大統領の対中関税の引き上げ表明を受けて米中貿易摩擦への懸念が再燃している。利上げをけん制し続けるエルドアン大統領の存在も意識され、市場参加者の間では「遠からず金利引き下げの選択肢が出てくる」との警戒感がくすぶる。
イスタンブール市長選の再実施決定はそんな中で起きた。もしエルドアン氏率いる与党・公正発展党(AKP)が勝利を収めれば大統領の気勢は上がり、利下げが現実味を帯びるのではないか――。リラの下値不安はすぐには消えそうにない。
【日経QUICKニュース(NQN)今晶】
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