米連邦準備理事会(FRB)が公表した2018年10月の上級銀行貸出担当者調査(SLOOS:Senior Loan Officer Opinion Survey)によると、FRBの利上げ継続は銀行の融資姿勢の厳格化にはつながっておらず、実体経済に対する金融引き締め効果は限定的なようだ。
大・中規模企業向け融資基準は緩和されたままな一方、小規模企業向け融資や商業用不動産向け融資には若干の厳格化がみられ、不動産市況に対する警戒感が共有されている模様。貸出基準と条件を緩和したものの企業の需要は低迷しているとの指摘は、景気鈍化の兆候といえなくもない。
今回の調査では、融資姿勢と利回り曲線に対する2つの特別な質問が含まれていた。今年初め以来のイールドカーブのフラット化に応じて融資姿勢が変化したかという質問には、影響がなかったという答えが一般的だった。対照的に、緩やかにイールドカーブが逆転するという仮説に対しての質問には、好ましくないシナリオであるとして、すべての融資にわたって基準や条件を厳格化すると回答された。不確実な経済見通しと既存のローン・ポートフォリオの悪化が懸念され、貸出の収益性の低下によってリスク許容度が低下するとされた。
同調査票の送付は10月1日で提出締め切りが12日だった。10月初旬からの米株大幅下落のタイミングと重なる。FRBがイールドカーブの逆転に触れたことと、株価調整を関連付けるというのは的外れではないだろう。(丹下智博)
※QUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した記事です。トレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。また、QUICKデリバティブズコメントでは特設サイト上で「US Dashboard」のサービスを始めました。米経済・市場の変化を見極めるツールです。