トランプ大統領は8日、米連邦準備理事会(FRB)の利上げを改めてけん制するコメントをツイッターに投稿した。トランプ氏は「経済指標は本当に良い。想像できますか?今日、金利の正常化がかなり早いペースで進められているが、過去の政権のようにゼロ金利政策が長期化していればもっと(景気回復は)簡単だったろう。市場は2016年の選挙以降、大きくなった!」とつぶやいた。パウエルFRB議長が4日に利上げの一時停止に加え、バランスシートの縮小を見直す方針を示し、その後に米株は大幅高となっているにも関わらず、トランプ大統領としては改めてFRBの利上げをけん制した格好だ。
これに先立つ7日、昨年9月にFRB理事に指名されていた元FRBエコノミストのネリー・リャン氏が指名を辞退した。リャン氏は1986年に分析エコノミストとしてFRBに加わり、2017年に退任。その後はリベラル系シンクタンクのブルッキングス研究所のシニアフェローや国際通貨基金(IMF)の顧問を務めた。リャン氏は民主党員のため、トランプ政権が議会上院での承認公聴会に備えて民主党に配慮した可能性が考えられたが、金融政策に関してはややタカ派的なスタンスとされた。トランプ大統領がFRBの利上げをけん制し続ける中、リャン氏としては厳しい状況に巻き込まれることを警戒して辞退した可能性も考えられる。人事を承認する米上院で規制緩和派の議員から就任に反対する意見が浮上していたという。
証券会社カウエンは8日付のリポートで「リャン氏の指名辞退でリスクが増大した」と指摘した。システミックリスクのエキスパートとして経験豊富なリャン氏が辞退したことで、米銀大手には広くネガティブな影響が予想されるとしながら、金融政策に関しては「金融政策の統一性の重要性を理解する人物で、彼女がパウエル議長の価値を低下させる恐れはなかっただけに、パウエル議長による金利の正常化を支持すると見込まれていた」とし、新たに指名される候補はトランプ大統領の意向を受けてパウエル氏の利上げ路線を支持しない恐れがあることから「FRBがマクロ的な不安定要因になる恐れがある」と指摘した。
市場では、トランプ大統領がパウエル議長を解任することは難しいながら、将来的にFRB議長を交代させるために意中の人物を理事として送り込むのではないかと警戒されていた。FRB批判を続けるトランプ大統領だけに、リャン氏に替わる今後の理事候補の指名でFRB攻撃の本気度がうかがえそう。カウエンは「ホワイトハウスは今後数カ月の間に代替候補を出すと見込まれるが、まだ実行可能な候補は聞いていない」と締めくくっていた。(片平正ニ)
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