QUICKコメントチーム=岩切清司
2日の米市場で主要な株価指数は大幅続落した。米ダウ工業株30種平均は2日間で約850ドルも下げた。引き金を引いたのは1日発表の9月の米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況感指数で、一晩明けても「ショック」を消化することはできなかった。欧州市場にも伝播し、主要株価指数であるSTOXX600は前日比2.7%安と、下落率は2018年12月以来10カ月ぶりの大きさ。一見すると世界同時株安の再来かと身構えてしまう。
ただ、グローバルの株式市場で投資家が一斉に株式を放り投げるかと問われれば疑問もある。
■米S&P500(青)>欧州STOXX600(黄)>日本株ETF(紫)>中国株ETF(赤)
今年に入り足元までのパフォーマンスを順番に並べると、米株>欧州株>日本株>中国株となる(日中は米市場の上場投資信託=ETF)。
特に中国株ETFは9月中旬から先行して調整モード入りしていた。むしろ欧米株が急落した2日は小反発し0.1%高で引けるなど落ち着いた値動き。日本株ETFも下げたが下落率は1.23%と米主要指数に比べ小さく、大取の日経平均先物(12月物)のそれよりも小幅だった。世界景気の先行き不透明感をある程度、織り込んでいたアジア株に能天気だった欧米株がサヤ寄せしただけに過ぎないと見ることも可能だ。
ISM製造業ショックに戦々恐々としていそうな米市場関係者だが、逆張りスタンスの声も出てきた。米調査会社ファンドストラットのトーマス・リー氏の2日付のレポートが興味深い。タイトルは「ISM bottom likely in?Long-term YC predicted 48 Sept. ISM 16m ago…」。同氏は米10年債と30年債の利回り差の動向に着目している。縮小傾向にあったが、既に反転基調に転じている。これを過去のISM指数に対し16か月先行させると連動性が浮かび上がるといい、現状を考慮すれば「低下一途だったISM製造業は底入れ」と判断できるというのだ。
■米10年債と30年債の利回り差(赤点)とISM指数(紺)
※ファンドストラットのトーマス・リー氏のレポートより
リー氏は頻繁にマーケット番組にも出演するなど、米市場で認知度はある。日々、レポートを拝読しているが、「まーよくこんな細かいところまで」と感心させられることが多い。カバー範囲も広く先日はウィーワークと米レポ市場の因果関係について指摘して日本でも耳目を集めた。ビットコインについてもよく取り上げている。シグナル探索隊とでも言えばいいだろうか。そんな彼が見つけ出した「光」に一度、視線を送ってみてもいいかもしれない。
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