日本証券アナリスト協会が4月7日に開催したセミナー。金融庁の森信親長官が講演した内容が、金融市場で話題となっています。
というのも、資産運用の世界において「顧客である消費者の真の利益をかえりみない、生産者の論理が横行」している傾向が「顕著に見受けられる」と発言し、現状の資産運用業界の問題点を指摘したからです。
講演の中で森長官は、2018年1月から開始される積み立て型の少額投資非課税制度(NISA)の対象となりうる投資信託について、アクティブ型株式投信でわずか5本、インデックス型株式投信で50本弱にとどまると述べました。
そこでQUICK資産運用研究所(研究所の概要はこちら)は、金融庁が定めた基準に沿って、金融庁が2018年に導入する積み立て型の少額投資非課税制度(NISA)の対象となる投資信託を推定しました。
アクティブ型はわずか5本、うち直接販売が4本
国内籍・公募の追加型株式投信のうちアクティブ型はわずか5本でした(3月末時点)。さわかみファンドや、ひふみ投信など独立系運用会社が運用し、証券会社や銀行など金融機関を経由しない「直接販売」が中心の投信が4本を占めました。
※スクリーニング条件
◯国内籍・公募の追加型株式投信(2017年3月末基準、ETFとDC・ラップ専用を除く)のうち、純資産総額50億円以上のアクティブ型。5年以上の運用実績があり、償還までの期間が20年以上か無期限のもの。毎月分配型は対象から除いた。
◯アクティブ型でもインデックス型を組み合わせたタイプは対象から除いた。
◯販売手数料が上限ゼロのファンドに限定。実質信託報酬(税込み)は投資対象資産が国内は1.08%以下、内外・海外は1.62%以下に絞った。
◯「存続年数3分の2以上で資金流入超過」の条件は、日次ベースの資金流出入額(QUICK推計値)に基づいて算出した。決算日の翌日から1年後の決算日までを1年として計算。設定日から初回決算日まで1年に満たない場合は1年とカウントした。
(注)積み立て型NISAの対象商品として販売するには金融庁への届け出が必要となる。
なお、森長官は講演で、海外と日本の資産運用業界を比較し、日本について「運用会社の社長が運用知識・経験に関係なく親会社の販売会社から歴代送り込まれたり、ポートフォリオ・マネージャーは運用者である前に○○金融グループの社員であるという意識が強く、運用成績を上げるより定年までいかに間違いをせず無事に勤めあげるかが優先されてはいないでしょうか」と述べ、投信の販売会社(証券会社や銀行)が運用会社の親会社となることへの懸念を表明しています。
インデックス型50本はこちら
国内籍・公募の追加型株式投信のインデックス型は50本前後となりそうです(3月末時点)。三菱UFJ国際投信の「eMAXIS」やニッセイアセットマネジメントの「<購入・換金手数料なし>」、アセットマネジメントOneの「たわらノーロード」など主要なインデックスシリーズが対象に入る見込みです。今後、既存ファンドで販売手数料や信託報酬が基準内に見直されたり、基準に沿った新規ファンドが組成されたりすれば、対象が拡大していくでしょう。
※スクリーニング条件
◯対象は国内公募の追加型株式投信(2017年3月末基準、ETFとDC・ラップ専用を除く)のうち、償還までの期間が20年以上か無期限のもの。毎月分配型は対象から除いた。ただし、当初DC専用だったが、2015年9月頃からネット証券などで販売が可能になった三井住友・DCシリーズは対象に含めた。
◯インデックスファンドは原則、投資信託協会の商品分類の補足分類が「インデックス型」のもの。積立NISAの対象指数の組合せで構成された資産複合型ファンドもインデックスファンドとした。
◯販売手数料が上限ゼロのファンドに限定。実質信託報酬(税込み)は投資対象資産が国内は0.54%以下、内外・海外は0.81%以下に絞った。
(注)積立NISAの対象商品として販売するには金融庁への届出が必要となる。
森長官は講演で、「高い運用力を持つ金融機関、顧客本位が組織に根付いた金融機関が発展し、顧客本位を口で言うだけで具体的な行動につなげられない金融機関が淘汰されていく市場メカニズムが有効に働くような環境を作っていくことが、我々の責務であり、そのため行政として最大限の努力をしていくつもりです」と、業界整備に向けての意欲を語っています。
資産形成・運用を考える個人投資家としては、資産運用会社の対応はもちろん、金融庁の発言なども見逃せないものとなりそうです。
(編集:QUICK Money World)
(調査:QUICK資産運用研究所⇒紹介サイト)