QUICK資産運用研究所が2016年12月中旬に実施した「個人の資産形成に関する意識調査」(回答者5104人)では、多くの人が資産形成・資産運用に取り組むのをためらっている実態が浮き彫りになった。投資にまつわる負のイメージが足かせになっており、誤解や知識不足に基づく面も大きい。個人の安定的な資産形成の実現には課題が山積している。
■「資産増やしたい」は半数以上
老後や安定した生活を送るために資産を増やしたいと考える人は全体の半数以上に達した。それにもかかわらず、株式や投資信託などリスク性金融商品を保有・運用したことがあるのは3割弱にとどまる。さらにリスク性商品を保有・運用したことがない人のうち、資産形成や資産運用に「必要性を感じない」と答えた人は7割近くにのぼった。
■負のイメージが足かせに
損をする、リスクが高い、怖い――。リスク性商品の保有・運用経験がない人ほど「資産形成・資産運用」に対する負のイメージが強い。一度は投資に踏み出したものの、「損をしたから」「取引が面倒だった」などの理由でやめてしまった人も多い。
リスク性商品を保有・運用したことのない人の多くが理由に挙げたのは「損をしそうだから」「元本割れのリスクがある取引は一切行いたくないから」。ここでも負のイメージでがんじがらめになっている。
■強い思い込み、発想の転換必要
資産形成・資産運用の未経験者からは「手元に資金がないから」や「商品に関する知識がないから」との理由も目立った。まとまったお金が貯まったり、勉強したりしてからでないと始められないという思い込みが強い。「投資しながらお金を貯める」「投資しながら勉強する」といった発想の転換が必要になりそうだ。
■実践的な投資教育を
金融知識などについて学ぶ「投資教育」の拡充も重要だ。今回の調査では金融に関する9つの問題を解いてもらったが、正解ゼロが全体の4割近くに達した。金融知識レベルと投資経験は相関が高い。正解が7~9個と多かった人はリスク性商品の保有・運用経験が8割を超えたのに対し、正解ゼロの人は1割以下だった。
「資産形成・資産運用について学習する機会があれば参加したい」と考える人は全体の4分の1程度にとどまる。しかし「リスク性商品の保有・運用経験はないが資産形成・資産運用の必要性を感じている人」に絞ってみれば、この割合は6割にグンと伸びる。資産形成・資産運用を始めたきっかけや情報収集のやり方なども、年代、性別、年収などによってまちまちだ。ターゲット層ごとにアプローチを変え、より実践的な投資教育に力を入れていく必要があるだろう。
■長期の資産形成に取り組みやすい環境へ
ほかにも信頼できる情報提供、長期の資産形成・資産運用に適した金融商品の普及、税制優遇の利用促進など取り組むべき課題は多い。安心の老後、安定した生活、そのために投資で資産を増やすにはそれなりのリスクを負わなければならない。ただ、リスクを軽減する方法はあるし、少額からでも始められる。誰もが気負わず、少しずつ、ゆっくり気長に取り組もうと思えるような環境づくりにさらなる工夫が欠かせない。
(QUICK資産運用研究所 中田裕子 西田玲子)