フィデリティ投信が運用する「フィデリティ・USリート・ファンドB(為替ヘッジなし)」は、15日の決算で分配金を引き下げた。分配金の減額は昨年11月以来1年ぶり。1万口あたりの分配金を前月の70円から35円に減らし、2003年12月の設定後で最低水準とした。
同ファンドの純資産総額(残高)は15日時点で1兆1982億円と、国内公募の追加型株式投資信託(ETFを除く)で最も多い。フィデリティ投信は分配金を引き下げた理由について「安定した収益分配を継続するとともに、中長期的な基準価額の上昇を目指すため」としている。
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「フィデリティ・USリート・ファンド B(為替ヘッジなし)」の分配金について
昨年11月に「フィデリティ・USリート・ファンドB」が分配金を引き下げた後、海外の不動産投資信託(REIT)で運用する大型ファンドが相次いで分配金を減額。それまで高い分配金を売り物に人気を集めていた毎月分配の「海外REIT型」ファンドは大量の資金流出に見舞われた。
1年が経過した現在でも資金流出に歯止めがかかっていない。QUICK資産運用研究所が試算したところ、「海外REIT型」は昨年11月から12カ月連続で解約額が設定額を上回っている。今年9月と10月は月間の資金流出額が1000億円を超えた。
今年1月から10月までの資金動向を見ると、追加型株式投信(ETF、ラップ・SMA専用を除く)のうち流出超過額の上位3本に「海外REIT型」の大型ファンドが並んだ。首位は「新光US-REITオープン<愛称:ゼウス>」で2740億円の流出超、2位は「ラサール・グローバルREITファンド(毎月分配型)」で2302億円の流出超、3位が「フィデリティ・USリート・ファンドB」で1607億円の流出超だった。
投信マネーに変調をもたらした「フィデリティ・USリート・ファンドB」の分配金減額から1年。動揺が収まらない中での再引き下げが今後どんな波紋を広げるかが注目される。
(QUICK資産運用研究所 西田玲子)