国内公募の追加型株式投資信託で、投資家にとっての保有コストにあたる信託報酬が低下している。指数連動を目指すインデックス型の追加型株式投信(ETF・ラップ口座専用・マネープールなどを除く)について、QUICK資産運用研究所が2017年11月末時点の信託報酬を調べたところ、平均値は0.56%(税込み・年率)だった。前年同月末の0.60%と比べ、0.04ポイント低下した。
来年1月に始まる積み立て型の少額投資非課税制度(つみたてNISA)に向けて、信託報酬を引き下げたり、コストの安い投信を投入したりする運用会社が増えたことなどが背景にある。つみたてNISAの対象商品は、信託報酬が一定水準を下回る低コストの投信に限定される。
一方、市場平均を上回る運用成績を目指すアクティブ型の平均は2017年11月末時点で1.54%。前年同月末(1.56%)から0.02ポイントの低下にとどまり、信託報酬の高止まりが続いている。
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<信託報酬引き下げを巡る最近の動き一覧>
■2017年
7/31 三菱UFJ国際投信が「eMAXIS Slim」シリーズに新興国株式型を追加、業界最低に並ぶ信託報酬
8/16 三菱UFJ国際投信、「つみたて」シリーズ7本投入
8/29 りそなアセットマネジメントが「Smart-i」シリーズ9本投入、TOPIX連動型などで業界最低更新
9/21 三井住友アセットマネジメント、TOPIX連動型を業界最低に引き下げ
9/29 楽天投信投資顧問、「楽天・バンガード・ファンド」シリーズ2本投入
10/02 大和投信の「iFree」と三菱UFJ国際投信の「eMAXIS」「eMAXIS Slim」、一部の信託報酬が業界最低に
11/10 三菱UFJ国際投信の「eMAXIS Slim」、TOPIX連動型などを業界最低に引き下げ
11/17 楽天投信投資顧問、「楽天・バンガード・ファンド」シリーズに新興国株式型を投入
11/21 ニッセイアセットマネジメントの「購入・換金手数料なし」シリーズ、先進国株式型など一部の信託報酬を引き下げ
11/24 三井住友トラスト・アセットマネジメント、「i-SMT」シリーズ2本投入
11/28 三井住友トラスト・アセットマネジメント、「SMT」シリーズに3本追加
12/13 三菱UFJ国際投信が「eMAXIS Slim」の新興国株式型の信託報酬を引き下げ
12/30 アセットマネジメントOneが「たわらノーロード」の信託報酬下げ
■2018年
2/16 ニッセイアセットマネジメントが「購入・換金手数料なし」シリーズの日経平均連動型の信託報酬を引き下げ
2/21 ニッセイアセットマネジメントが「購入・換金手数料なし」シリーズのTOPIX連動型の信託報酬を引き下げ
※運用各社の発表資料をもとに作成。2017年12月下旬以降は予定。
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<運用会社のインデックスシリーズ比較>
運用各社の主なインデックスシリーズについて、2017年12月20日時点の信託報酬を一覧にまとめた(今後の引き下げ予定分も反映)。
投資対象の運用資産別に見ると、信託報酬が最低なのは国内債券で運用するタイプ。三菱UFJ国際投信の「eMAXIS Slim」シリーズと、ニッセイアセットマネジメントの「購入・換金手数料なし」シリーズが0.15012%(税込み・年率)で最も安い。この2つのシリーズは、国内債券以外の運用資産でも業界最安が多い。
<つみたてNISA向けバランス型投信比較>
来年から始まる積み立て型の少額投資非課税制度(つみたてNISA)向けの対象商品は、指数に連動するインデックス型の投資信託が中心だ。12月18日時点で金融庁に届け出されたインデックス型は117本で、このうち複数の資産に分散投資するバランス型が51本を占める。
この51本のファンドの信託報酬と投資対象資産を一覧にした。投資対象の地域別に見ると、国内の資産に絞ったバランス型の信託報酬が比較的安い。海外の資産に投資するタイプでは、新興国の資産を含めたものより先進国に投資先を限定したファンドの信託報酬が安い傾向にある。
(QUICK資産運用研究所 西田玲子)