アセットマネジメントOneが7月31日に設定した円建てで国内初となる「元本確保型」の投資信託には、300億円超の資金が集まった。当初設定額は今年設定された国内公募の株式投資信託で4番目の大きさ。投資で損をしたくない保守的なマネーを取り込み、「貯蓄から投資へ」の流れに新たな風穴を開けた。アセマネOneは9月に向けて販売会社を増やした「第2弾」も準備中だ。
アセマネOneが運用を始めた「ゴールドマン・サックス社債/国際分散投資戦略ファンド2018―07」(47212187)は、約10年後の満期償還まで保有し続ければ元本確保が狙える投信だ。中途解約した場合は損失が生じる可能性があるが、同社によると満期時に円建てで元本確保を目指すのは国内でこのファンドだけだ。
申し込み期間が限られる「単位型」で、7月11~30日に大和証券1社で販売した。投資家は300万円から買うことができ、購入時手数料は1億円未満の場合が税込みで1.08%、1億円以上なら無料になる。
このファンドが投資するのは、米金融大手ゴールドマン・サックス(GS)が発行する円建ての仕組債。「国際金融システム上重要な金融機関(G―SIFIs)」にも認定されているGSが経営破たんしない限り、10年後の満期日に額面で償還されるため、この仕組債に投資しているファンドも元本確保が狙える。
GSの仕組債からは年1回、2種類のクーポン(利息)が支払われる。その1つが年0.32%程度の「固定クーポン」。この部分で年0.3132%(税込み)の信託報酬がまかなえるので、投資家は元本を確保したまま運用を続けられる。
もう1つは、国内外の株式や債券での運用成績に連動する「実績連動クーポン」。アセマネOneが独自に開発した計量モデル「国際分散投資戦略」による運用が好調ならクーポンが高くなり、リターンがマイナスの場合はゼロになる。
投資家が年1回の決算時に受け取る分配金は、この実績連動クーポンが原資になる。実績連動クーポンの中から約1割の成功報酬などが差し引かれ、残りの部分が分配金の支払いにあてられる。実質連動クーポンがゼロの場合は分配金が支払われない。
「国際分散投資戦略」が目標とするリスク水準は3%程度。価格変動リスクを抑えて保守的に運用するため、大幅な値上がり益は狙えない。アセマネOneのシミュレーションによると、この戦略による過去10年のリターンは年2.3%程度(2018年3月末時点)だった。
それでも、ここから成功報酬として約1割(0.2%程度)を差し引いた後のリターンは年2.1%程度。投資家は元本を確保しつつ、足元で年0.01%の10年の定期預金や年0.05%の個人向け国債の金利を上回るリターンを得られたことになる。
単位型なので分配金はすべて課税対象の「普通分配金」になる。追加型のように元本を取り崩す「特別分配金」が支払われることはない。
「第2弾」は9月末の設定を目指す。販売会社は今回の大和証券だけでなく、ほかの証券会社や大手銀行、地方銀行に拡大する見込みだ。
(QUICK資産運用研究所 西田玲子)