独立系金融アドバイザー(IFA)に対する社会的な認知度は不十分だが、ビジネスの成長余地は大きい--。金融専門誌を発行する想研(東京・中央)が実施したアンケートから、IFA業者の多くが自身の業界の現状と先行きをこう捉えていることが分かった。
調査は法人として金融商品仲介業者に登録している全国のIFAを対象に6~7月中旬に実施し、55社から回答を得た。
■IFAの今後は「成長が期待できる」が約9割
IFA業界に対する世間一般での認知度の高まりについて、「強く思う」「まあ思う」の合計が47%強と、「変わっていない」(約44%)と拮抗。「メディアに取り上げられていることが増えている」という指摘がある一方、「消費者からIFAという言葉を聞いたことがない」との声があがった。
金融商品仲介業者の今後については、9割近くが「成長が期待できる」と回答。「より顧客本位の仕事ができる可能性がある仕組み」「個人投資家の運用に対する知識の向上とニーズに一番適している」といった分析が聞かれた。
■17年度の営業収益が「伸びた」は85%
アンケートの主な質問と結果は下記の通り。
(Q)2017年度(17年4月~18年3月)の営業収益
(A)伸びたが約85%、うち50%以上伸びたのは約30%
(Q)2017年度の営業収益に占める金融商品仲介業務の割合
(A)100%が2割、50%未満が約44%
(Q)金融商品仲介業務以外の収入源<複数回答あり>
(A)生命保険代理店業務が約66%、損害保険代理店業務が約38%
(Q)顧客獲得方法<複数回答あり>
(A)既存客からの紹介が最多の8割超、自社セミナー・講演活動は5割弱
(Q)営業員の人数
(A)5人以下が約56%、増員を予定・検討は約75%
(Q)タブレット端末の利用状況と利用目的
(A)半数が導入済み、投資信託の資料類の説明に使うのが8割近く
(Q)顧客への投資信託提案にあたって参考にする情報<複数回答あり>
(A)所属する金融商品取引業者からの情報が最多の約5割
■個人の投資拡大、金融庁はIFAの役割に期待
想研がアンケートと並行する形で7月下旬に都内で開催したIFAを対象としたフォーラムには、金融商品取引業者や運用会社などを含む約250人が集まった。
金融庁総合政策局リスク分析総括課の水野清司・主任統括検査官は「顧客本位の業務運営の定着と見える化に向けた取り組み」と題した基調講演で、同庁金融研究センターがまとめたディスカッションペーパー「顧客本位の業務運営にふさわしい金融商品販売のあり方」の調査分析内容の一部を紹介し、個人が投資に踏み出すうえでのIFAの役割の大きさに言及した。
同報告書では、投資の必要性を認識しているが投資を開始できていない「資産保持層」の間には「安心して相談できる専門家が見つかったら」投資を開始するという人が多い一方、資産を保持しているかどうかの顧客層によらず「対面での投資相談」に対する希望が少なくない点が示された。
金融庁は投信販売会社における比較可能な共通KPI(評価指標)を6月29日に公表しており、水野氏はフォーラム後の懇親会の乾杯の音頭をとる際に「IFAも積極的に共通KPIを開示し、顧客本位の業務運営の取り組み状況を『見える化』してほしい」と期待を寄せた。
(QUICK資産運用研究所 高瀬浩)