資産形成を目指す個人投資家の間で、指数連動型のインデックス投資が広まりつつある。運用各社も様々なインデックスファンドを展開し、信託報酬の引き下げや品ぞろえの拡充など独自の取り組みでしのぎを削っている。
「インデックスファンドNAVI」では、運用各社のインデックスファンドシリーズについて、それぞれの特徴や強みを解説する。今回取り上げるのは、アセットマネジメントOneの「たわらノーロード」。スタートは2015年12月と歴史は浅いが、幅広い販売網を持ち、確かな存在感を示す「たわら」に迫る。
■「若い人に希望を」、シリーズの出発点に
「これから未来を担っていく若い人たちに希望を持ってほしい」――。そんな思いがシリーズ立ち上げの出発点になった。少子高齢化が進み、低金利が長引くなか、若い人の経済的な不安を和らげるためには資産形成に取り組みやすい商品が必要だと考えた。そこで提供し始めたのが、長期の積み立て投資がしやすい低コストのインデックスファンドシリーズだ。
もともと同社の前身のひとつである旧DIAMアセットマネジメントが機関投資家向けにインデックス運用の商品を多く手掛けており、比較的スムーズに商品化が実現。15年12月に「たわらノーロード」の第1号ファンドが運用を開始した。
当時はすでにほかの複数の運用会社がインデックスファンドシリーズを展開。信託報酬などのコスト面や商品のラインアップで他社に遜色のないシリーズ化を目指した。
■親しみやすいネーミング、ロゴマークにもこだわり
独自色を打ち出したのが「たわら」のネーミングだ。他社のインデックスファンドシリーズはカタカナやアルファベットの名前がほとんどだが、ひらがな3文字で親しみやすさや分かりやすさを表現した。社内公募で集まった約300個の候補から選出。コメなどの穀物をくるんで保存する「たわら」には、コツコツと蓄える、積み上げていくといった意味が込められている。
ビジュアルにもこだわった。インターネットで取引する顧客の認知度向上を狙って、3つの黒い俵型を組み合わせた家紋のようなロゴマークを作った。基調のメインカラーは小判や金運、稲穂など、日本でおめでたいイメージがある黄色にした。
■低コスト化は「常に検討」、実質コストは低水準
「たわらノーロード」は現在29本(ラップ口座向けを除く)。インデックス型は国内外の株式や債券、REIT(不動産投資信託)に投資する12本と、複数の資産に分散投資するバランス型の14本をそろえる。16年3月には市場平均以上のリターンを目指すアクティブ(積極運用)型の「たわらノーロードplus」を3本追加した。純資産総額(残高)は18年8月末時点で合計674億円(アクティブ型を含む)に積み上がっている。
このうち9本のインデックス型は、2017年12月末に設定後で初めて信託報酬を引き下げた。さらなる低コスト化の可能性について、花村泰廣・投資信託情報サービス部長は「むやみやたらに引き下げれば良いというものではなく、残高やコストとの見合いで常に検討している」と話す。
信託報酬だけを比較すると業界最安水準をやや上回るが、「投資家が負担する実質コストは業界でもかなり安い」(花村氏)という。投信のコストは信託報酬で比較する場合が多いが、実際には売買委託手数料や事務処理にかかる諸費用などが追加で発生する。これらを含めた「実質コスト」は、マザーファンドの規模が大きいほど負担が軽くなる傾向にある。
■資産形成層にアプローチ、異業種と連携
「たわらノーロード」は積み立て型の少額投資非課税制度(つみたてNISA)や個人型確定拠出年金(iDeCo)での取り扱いが多く、販売会社数は180社を超える。ネット証券を経由した購入が中心だ。他のインデックスシリーズと比べると、全国の信用金庫で幅広く販売しているのが特徴の1つだ。
最近は異業種と連携して、資産形成層へのアプローチも進めている。今年3月22日には家計簿アプリを運営するマネーフォワードと組み、「春から始める!賢いお金づくり~iDeCoとNISAの活用法~」と題したセミナーを開いた。ファイナンシャルプランナー(FP)を招き、参加者が投資のイロハを学んだ。
3月末にはABCクッキングスタジオ(東京・千代田)とタイアップして女性限定のセミナー「カラダとおカネはコツコツつくられる~お花見ごはんと資産運用のはなし~」を開催。料理の実演・試食後にアセマネOneの講師が「おカネ」について話し、参加者には7つの質問に答えてリスク許容度やモデルポートフォリオを診断するロボットアドバイザー「CAPTAIN One」を体験してもらった。
投資未経験者の中には「投資に興味はあるけど、どうしたらいいか分からない」といった悩みを抱える人が多い。今後もイベントなどを通して投資に興味を持ってもらい、長期の資産形成に取り組む若い人を応援していく予定だ。
<関連サイト>
◇ロボットアドバイザー「CAPTAIN One」
(QUICK資産運用研究所 小松めぐみ)