資産形成を目指す個人投資家の間で、指数連動型のインデックス投資が広まりつつある。運用各社も様々なインデックスファンドを展開し、信託報酬の引き下げや品ぞろえの拡充など独自の取り組みでしのぎを削っている。
「インデックスファンドNAVI」では、運用各社のインデックスファンドシリーズについて、それぞれの特徴や強みを解説する。今回はニッセイアセットマネジメントが運用する<購入・換金手数料なし>シリーズを取り上げる。名前が象徴するように、とことん低コストを追求している。
■2013年に始動、つみたてNISA対象は7本
スタートしたのは2013年。「米国と同じように日本でもインデックスファンドを普及させたい」という想いから始まった。同社が2004年に確定拠出年金(DC)専用に設定し、09年から一般にも販売し始めたコストの安い「ニッセイ日経225インデックスファンド」(29311041)がヒットしていたこともあり、インデックスファンドがメジャーになると確信。シリーズの設計当初から低コストに徹底的にこだわった。
シリーズは現在、12本を運用。純資産総額(残高)の合計は18年8月末時点で1571億円にのぼる(図表1)。このうち10本は信託報酬が業界最安値水準。7本がつみたてNISA(積み立て型の少額投資非課税制度)の対象となっている。
■目論見書やイラストを「断捨離」
「購入・換金手数料なし」というシリーズ名は、低コストへのこだわりの表れで、購入するときも解約するときも手数料がゼロであることを意味する。コンセプトが一目で伝わりやすい名前にした。
信託報酬を安く抑えるために、運用にかかるコストを徹底的にカット。ネット経由での販売を中心にして目論見書などの書類をペーパーレス化するだけでなく、イラストを排除したり、白黒のシンプルなものにしたりしてコストを削った。
極め付きは信託報酬引き下げのタイミングだ。同シリーズは「残高が増えてきたら信託報酬を下げる」というスタンスで、15年から4年連続で信託報酬を下げている。17年までは秋に引き下げを発表し、年1回の定期的な目論見書の改訂時期に合わせた。そうすれば臨時で目論見書を発行する手間が省け、費用の節約につながるからだ。18年は競合他社の値下げや残高の状況を踏まえ、夏に前倒しで引き下げた。
ここまでコストにこだわるのは、個人投資家と「ウィンウィン」の関係を築くのが目的。同シリーズはインデックスファンドのコスト革命で業界をけん引してきた。コストの安さが個人投資家の支持を集め、「残高増→信託報酬引き下げ→残高増」という好循環を生んでいる。
■人気の外国株ファンド、残高は1000億円超
同シリーズの中で人気が高いのは「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」(2931113C)だ(図表2)。投信ブロガーが投票する「投信ブロガーが選ぶ!Fund of the Year」に2014年から4年連続で入賞。18年8月末には残高が1000億円を突破した。国内でシリーズ展開するインデックスファンドで最も規模が大きい。
先進国株が対象の「MSCIコクサイ・インデックス(配当込み)」に連動するファンドは、ほかにたくさんある。その中でも選ばれている理由について、投資信託企画部の結城宗治担当部長は「残高が増えたら信託報酬を下げる実績を積んできたことで、個人投資家からの信認が得られてきたのではないか」と分析している。
■さらなるラインアップ拡充を検討
今後も低コスト化に向けた努力を継続する方針だ。信託報酬とは別に発生する諸費用を含め、投資家が負担する実質コストの抑制を目指す。
コストを抑制しているため、販売会社はネット証券が中心。販売チャネルが限られているだけに、認知度向上は課題だ。今後はより多くの顧客ニーズを満たすために、ラインアップの拡充を検討。複数の資産に分散投資するバランス型などの追加を視野に入れている。
<関連サイト>
◇こだわりのインデックスファンド<購入・換金手数料なし>シリーズ
(QUICK資産運用研究所 小松めぐみ)