資産形成を目指す個人投資家の間で、指数連動型のインデックス投資が広まりつつある。運用各社も様々なインデックスファンドを展開し、信託報酬の引き下げや品ぞろえの拡充など独自の取り組みでしのぎを削っている。
「インデックスファンドNAVI」では、運用各社のインデックスファンドシリーズについて、それぞれの特徴や強みを解説する。今回取り上げるのは、大和証券投資信託委託が運用する「iFree(アイフリー)」シリーズ。一般的なインデックスファンドだけでなく、他社にはない“とんがった”商品を相次いで投入し、独自路線を行く。
■投資をもっと自由に
「iFree」のスタートは2016年9月と、他社のインデックスシリーズと比べて後発組だ。大和証券のみで販売する「ダイワ・インデックスセレクト」シリーズは2013年11月から運用しているが、「iFree」は主にネット経由で取引する資産形成層向けにコストを安く抑えた新シリーズとして立ち上げた。
名前に込めたのは「投資(investment)、もっと自由(Free)に」との思いだ。多様化する投資家のニーズに対応し、豊富なラインアップの中から投資家が自分の好みに合ったファンドを自由に選べるようにした。
「iFree」のインデックスファンドには、東証株価指数(TOPIX)やMSCIコクサイ・インデックスなど代表的な指数に連動するベーシックなタイプに加え、特徴ある成長分野に着目した「iFreeNEXT」シリーズがある。
■「GPIF」「FANG」……高い期待リターンを提供
「iFree」には他社のインデックスシリーズでは取り扱いのない個性的なファンドが目立つ。例えば8月末に設定した「iFree 年金バランス」(04316188)は、公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の基本ポートフォリオに近づくように運用する。
「iFreeNEXT」では1月に「NYSE FANGプラス指数」に連動するインデックスファンドを世界で初めて投入した。FANGと呼ばれる米国のハイテク企業を中心にアリババなど中国のIT(情報技術)企業なども組み入れられている。
今月19日には日本の小型株を投資対象にした「iFreeNEXT 日本小型株インデックス」(0431118A)の運用を開始した。ラインアップの拡充に取り組む背景には「安易にコストの引き下げ競争に走るのではなく、高い期待リターンの提供こそが真に投資家のためになる」との考えがある。
■アクティブ型とレバレッジ型を導入
より高いリターンが期待できるファンドのカテゴリーとして、今年1月にテーマ型のアクティブファンドシリーズの「iFreeActive」を、8月にはレバレッジファンドシリーズの「iFreeレバレッジ」を新たに導入した。
「iFreeActive」には、ゲーム対戦競技「eスポーツ」や教育とITを組み合わせた「エドテック」など目を引く最新のテーマ型ファンドをそろえる。1つのファンドに組み入れるのは10~20銘柄程度。月次レポートにはカラフルな写真やグラフを散りばめ、組み入れ銘柄を分かりやすく表示するなど工夫をこらした。
「iFreeレバレッジ」は、積み立て投資のメリットを存分に享受できると見込む自信作だ。8月に「iFreeレバレッジS&P500」(04315188)、今月19日に「iFreeレバレッジ NASDAQ100」(0431218A)を設定した。日々の値動きが各指数の2倍程度になるように運用する。
これらの指数にレバレッジをかけるファンドは、ETF(上場投信)を除くと国内初となる。大和投資信託の試算によると、「iFreeレバレッジ NASDAQ100」で今年6月まで毎月3万円ずつ20年間積み立て投資した場合、資産は元本の8倍程度になった。TOPIX連動型だと1.4倍にとどまる。
■資産形成の議論で大事なことは……
執行役員の熊原祐次マーケティング副本部長は「いまの資産形成の議論では大事なことが見過ごされている。わずかなコストの差よりも何に投資すべきか検証されていないのが残念」と指摘。若い資産形成層ほどより高いリターンを追求すべきだと提唱し、「どの資産で積み立て投資をするのかは、就職先を決めるのと同じかそれ以上に大切」と熱弁を振るう。
年内には主に資産形成層をターゲットにしたオウンドメディアをリリースする予定。投資未経験者でものぞいてみたくなるようなコンテンツを展開し、「マジメに面白く」投資を考えるきっかけを提供したいと考えている。顧客目線に立って低コスト化に向けた努力も続ける方針。今後も運用会社として投資家の成功体験をサポートし、積み立て投資を根付かせる取り組みなどを進めていく。
(QUICK資産運用研究所 小松めぐみ)