楽天証券が2008年10月に独立系金融アドバイザー(IFA)事業を始めてから10年。契約する事業者は10月末で85社で、所属するIFAは1000人に達した。IFAを通じた預かり資産残高は3530億円にのぼる。11月22日に都内で開いた「楽天証券IFAカンファレンス」には、約200人のIFAが集まった。
IFAは金融機関から独立した金融アドバイザーで、顧客に資産運用を助言し、金融商品の提案・仲介などを手掛ける。国内の事業者数は10月末時点で個人登録を含め875。
■カンファレンスで成績上位IFAを表彰
同カンファレンスは今回で19回目。契約するIFA会社と所属するIFA個人を対象に、9月末までの半年間の売り上げ(支払い報酬)総額と預かり資産残高増加額の上位をそれぞれ「ベスト・パフォーマンス賞」「ベスト・アセットグロース賞」として表彰した。
<ベスト・パフォーマンス賞>
第1位 アイ・パートナーズフィナンシャル
第2位 ファイナンシャルスタンダード
第3位 CSアセット
<ベスト・アセットグロース賞>
第1位 ファイナンシャルスタンダード
第2位 アイ・パートナーズフィナンシャル
第3位 SHIPS
両賞でベスト3入りしたファイナンシャルスタンダードの福田猛代表は「当社は相場を語ったり、金融市場の動向を読みながらの投資アドバイスは決してしない。顧客のリスク許容度に応じた資産分散による長期投資を薦めるスタンスが受け入れられている証しだと思う」と話す。市場が急変した10月以降も「顧客からの新規相談件数は減るどころか増えてきている」という。
■コミッション型からフィー型への転換を促す
楽天証券はカンファレンスで、19年2月に導入するIFA事業の新たなサービスを明らかにした。ひとつは「管理口座コース」の新設だ。現状の「仲介コース」は顧客が支払った売買手数料と投資信託の信託報酬(販売会社の取り分)に応じてIFA事業者に報酬を支払うが、預かり資産残高(管理口座料)と信託報酬をベースとする。
同社でIFA事業部長を務める大嶋広康常務執行役員は「米国ではフィー(預かり資産残高に応じた報酬)ベースで顧客に助言するIFAが大半で、平均すると資産残高に対して年1%程度のフィーを受け取っている」と説明する。日本でもコミッション(売買手数料型)からフィー型への転換を促すのが狙いだ。どちらのコースを選択するかは顧客が決めるが、管理口座コースでは投信がノーロード(手数料ゼロ)になるなど売買手数料は仲介コースに比べて安くなるようだ。
もうひとつは「紹介モデル」で、顧客がIFA事業者に新たな顧客を紹介する仕組み。紹介した顧客に対して、預かり資産残高に応じた紹介料を5年間にわたって毎月支払う。
QUICK資産運用研究所が三大都市圏に本社を置く金融商品仲介業者に所属または個人として外務員登録しているIFAに対して実施した「IFA実態調査」では、新規顧客の獲得方法(複数回答あり)は「顧客・取引先・知人からの紹介」が75.6%を占め、首位だった。楽天証券の「紹介モデル」は顧客開拓の新たな武器になる可能性を秘める。
楽天証券がきんざい(東京・新宿)と連携して7月に始めたIFAを養成するビジネススクールは11月に第1期の実践コースが終了。IFA事業の拡大に向けた取り組みを積極化している。
(QUICK資産運用研究所 高瀬浩)