韓国で9日に平昌冬季五輪が開幕し、アスリートの活躍だけでなく、北朝鮮による「ほほ笑み外交」が注目を集めている。金融・資本市場にとって北朝鮮情勢は、相場に重大な影響を及ぼしかねない関心事のひとつ。平昌冬季パラリンピックが閉幕する3月18日までは「異変」はない、というのが市場のコンセンサスとなっているが、はたして五輪・パラリンピック後はどうなるのか。
2月の「QUICK月次調査<外為>」※では、北朝鮮情勢や地政学リスクが円相場に与える影響、トランプ米政権のドル政策について、外国為替市場の担当者に聞いた。調査期間は2月5~8日、回答者数は78人。
※QUICKでは株式や債券、外為部門などの市場関係者を対象に毎月、足元の景気や相場動向についてアンケートを実施。結果を「QUICK月次調査」として各部門ごとに公表しています。
北朝鮮情勢、「緊張高まって円高」が60%
平昌五輪終了後の北朝鮮情勢について展望を聞いたところ、最も多かったのは「不透明な情勢が続き、円相場の不安材料」で回答全体の60%に達した。次いで「緊張が高まる方向に傾いて円高材料」が33%と、外為市場参加者の間では北朝鮮情勢への警戒は怠れないとの見方が大勢だ。円相場の方向性としては北朝鮮情勢を材料に円高方向を見込む向きが多い。
回答者からは「平昌五輪もあり、しばらくは落ち付いた展開になりそう。落ち着いている間に、株価調整は済ませておきたい」「平昌五輪後のリスク回避(姿勢の強まり)が少し気になるが、それがはやされるのはまだ先の話」といった声が聞かれた。一方、「中国で全人代が3月前半に開催されるが、その後、米国の北朝鮮先制攻撃の可能性が高まるだろう」と警戒を強める見方もあった。
米国のドル政策、「従来と変わらない」74%
トランプ米政権のドル政策を巡っては、ムニューシン米財務長官による異例のドル安容認発言を受け、1月25日の東京市場で円相場は1ドル=108円台まで上昇した。その後、トランプ米大統領が「強いドルが望ましい」と財務長官の発言を打ち消し、早々に沈静化を図ったものの、市場では輸出増を狙う米国の通商政策への思惑もあり、ドル安・円高方向に相場が傾きやすい状況が続いている。
今回の月次調査で「米国の為替相場に対する今後の姿勢」を聞いたところ、最も多かったのは「従来とあまり変わらない」で77%。次いで「ドル安重視が強まる」が22%。「ドル高重視が強まる」は4%にとどまった。
回答者からは「米国は今後のインフレ動向と、それをパウエル新FRB(米連邦準備理事会)議長がどう考えるか次第。その判断に大きな影響を与えると考えられるFRB副議長の人事が重要」「今秋に中間選挙を控えるなか、ドル高が加速するシナリオは考えにくい」といった意見の一方、「米国の金融政策の正常化は円安を促す材料。米税制改革の実施で物価上昇率が高まれば利上げペースが想定より速まる可能性も意識される。ドル高圧力が高まる場面もあるだろう」といった指摘も聞かれた。
※Qr1などQUICKの情報端末では、月次調査の詳細とヒストリカルデータをご覧いただけます。