アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)が25日の大引け後、2018年1~3月期(1Q)決算を発表する。QUICK FactSet Workstationによれば、調整後の1株当たり利益(EPS)の市場予想の平均値(23社、22日時点)は0.09ドルの黒字。前年同期(0.04ドルの赤字)から一転し、4四半期連続の黒字が見込まれている。主力の中央演算処理装置(CPU)の「ライゼン」に加え、仮想通貨のマイニング需要で画像処理半導体(GPU)の実績も好調とみられるが、ビットコインなどの上値が重いうえ、マイニング市場で中国勢との競争が激化するとみられ先行きに不透明感が残っている。
【1~3月期決算の市場予想】(前年同期比)
・売上高(営業収益) 15億6600万ドル(+59.1%)
・EPS(1株利益) 0.09ドル(0.04ドルの赤字、Non-GAAP)
QUICK FactSet Workstationを見ると、AMDの業績をけん引しているのが仮想通貨のマイニングに優れるGPU「ラデオン」を含むコンピューティング&グラフィックス部門(C&G)であることが分かる。2018年10~12月期(4Q)はサーバ向けプロセッサを含むエンタープライズ組み込み・セミカスタム部門(EESC)が減収の一方、C&Gは16%の増収となった。しかし1Qの市場予想は前四半期比3%減の9億2600万ドルと4四半期ぶりに減収が見込まれている。
ドイツ銀行証券は17日付のリポートで、1QのC&Gの売上高を10億3000万ドルと市場予想より強めに見込んだ。仮想通貨のマイニング関連の需要は12%以下と指摘。その上で2018年4~6月期(2Q)の見通しについては前四半期比で9%増の16億8000万ドルと見込み、仮想通貨関連のGPUの伸びが一服する一方でゲーム関連が伸びてEESCがけん引すると見込んだ。しかしEPSの増加は限られるとし、投資判断のホールド、目標株価12ドルを維持し慎重な見方を示していた。
【AMDのセグメント別売上高の推移】
(注)QUICK FactSet Workstationより作成
AMDに最も高い目標株価(27ドル)を設定しているローゼンブラット・セキュリティーズは19日付のリポートで、1Qの売上高を15億5000万ドル、EPSで0.08ドルと市場予想に近い数字で見込んでいた。1Q決算は想定内のものに落ち着くとしつつ、「2Qの業績見通しでライゼンの売上の勢いが続くことが示され、仮想通貨のマイニング需要の減速が示されなければ市場に好感されそうだ」と指摘した。
ただリポートでは、同社のアナリストが最近中国を出張したところ、仮想通貨のマイニング機器を手掛ける中国企業「ビットメイン」の躍進ぶりに驚かされたことを紹介していた。ビットメインは7月に仮想通貨イーサリアムのマイニングを行うための特定用途向け集積回路(ASIC)を販売するといい、「AMDの成長は緩やかになるだろう。GPUの平均販売価格も2018年10~12月期(4Q)にかけて低下しそうだ」とマイニング関連の競争が激化する可能性を指摘した。先行きについてはモバイル機器用のライゼン・モバイルのほか、デスクトップ用などで新型のCPUが出ることについて「同社の歴史でみても豊富なラインナップと言える」と評価。リポートは投資判断の買いを継続していたとはいえ、中国メーカーとの競争激化を警戒する内容だった。
AMDの株価は1月31日に13.85ドルで年初来高値を付け、貿易紛争懸念で株式市場が調整局面に入ると4月4日に9.04ドルまで下落。今年の高値から34%下げ、足元でも年初来の安値圏にある。年初来でフィラデルフィア半導体指数が1.42%高、エヌビディアが18.20%高、インテルが11.63%高となっているのに対し、AMDは2.82%安で同業他社の中で一人負けの状態にある。仮想通貨のビットコインが世界的に規制が強化されるのではないかとの懸念で上値が重いうえ、マイニング市場で中国勢の台頭が警戒される中、決算発表をキッカケにして買い戻しが入るのか難しい情勢だ。(片平正ニ)
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