今週は23日にグーグルを傘下に持つアルファベット、25日にフェイスブック、26日にアマゾン・ドット・コムと主力ハイテク株の発表が相次ぐ。3銘柄の株価は足元で上場来高値を更新するなど期待が先行しており、決算の内容が注目される。今回の決算プレビューは、米東部時間23日午後4時過ぎ(日本時間24日午前5時過ぎ)に4~6月期決算を発表するアルファベットを取り上げる。
QUICK FactSet Workstationによると18日時点の市場の予想EPS(1株利益)は9.67ドル。売上高は前年同期比24%増の321億ドルを上回ると予想されている。
【アルファベットの2018年4~6月期決算に対する市場予想】
・売上高 :321億9300万ドル(24%増)
・広告売上高 :276億3600万ドル(22%増)
・EPS(GAAPベース) :9.67ドル
(QUICK FactSet Workstationより)
4~6月期決算に対する市場の不安は乏しい。インターネット向け広告が依然として順調に拡大するというのがメーンシナリオで、4四半期連続で増収率が20%台に乗せそうだ。中でも成長の推進力となっているのが動画サイトの「You Tube(ユーチューブ)」。エバーコアISIのアナリストの試算によれば、4~6月期の売上高は30億ドル(3300億円)に達し、前年比の伸び率は30%に達するという。さらに年後半の残り2四半期もユーチューブはほぼ同じ増収ペースを維持すると見られる。
ネット広告の領域は動画も含め拡大している。電通によると18年の世界の広告市場は6135億ドルと初めて6000億ドルを突破する見通しだという。ネット向け広告は全体の38.4%を占め、初めてテレビを上回ると見込まれる。景気変動よりも構造変化の要因が大きく、アルファベットはその中でも勝ち組だけに、業績の安心感は景気敏感株よりも強い。
アルファベットの株価は四半期決算の発表直後に売られるか、伸び悩む傾向がある。これは業績期待を先取りして株価が事前に強含むため、材料出尽くしから利益を確定する動きが優勢になりやすいためだ。先行きの利益成長と株価のリズムを考慮すると「4~6月期決算まではいかなる株価下落局面も押し目買いの好機」(米系証券アナリスト)との指摘もあった。
一方でインターネット業界、中でも広告を手掛ける企業には逆風が吹いている。欧州連合(EU)は5月に個人情報保護ルール「一般データ保護規則(GDPR)」を導入した。簡単に言ってしまえば「EUから個人情報の移転禁止」。個人がネットで登録した情報の利用に制限がかかる。データを分析して最適な広告を表示させることで既存メディアより効果の高さを売り物にしてきたネット広告企業にとっては足かせになる可能性がある。
さらにEUは「クッキー法」の導入も視野に入れている。クッキーとはネット上に残る閲覧履歴、足跡と言ってもいい。誰が何を見たのか。その個人の趣味や嗜好、思想信条まで類推できるだけに貴重なデータだ。「ターゲティング広告」にとって欠かせないだけに、ネット広告業界は神経質になっている。
ただ、この点も株式市場は楽観視しているフシがある。あるアナリストは「GDPRは懸念されていたほど破壊的ではなく、実際にはより大きなエコシステムとプラットフォームに利益をもたらしている可能性がある」としていた。
さらにアルファベットという企業規模も見逃せない。「新たに規制が強化された業界においては参入障壁として働く。規制対応のためのコスト負担が、 大企業よりも小規模な企業において重くなるからだ。(グーグルは)すでにEUで他の規制問題に対処しており、他社よりも規制対応において先行していると考えられる」(ノムラ・セキュリティーズ・インターナショナル)。規模の利益を享受しやすいとなれば、ネットセクター関連株に投資するにあたってもディフェンシブ性すら意識されやすくなる。規制強化でもネットの巨人をなぎ倒すのは難しいようだ。(岩切清司)
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