テスラは8月1日の大引け後、2018年4~6月期(2Q)決算を発表する。QUICK FactSet Workstationによれば、調整後の1株当たり損益(EPS)の市場予想の平均値(20社、29日時点)は2.78ドルの赤字で、7四半期連続の赤字が見込まれている。電気自動車(EV)の「モデル3」の生産目標の週5000台は達成されたが、市場では量産に慎重な見方が支配的。前回の決算発表時にはカンファレンスコールでイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)の非常識な振る舞いも問題となった。
【4~6月期決算の市場予想】 (前年同期比)
・売上高 39億9000万ドル(+43.0%)
・EPS(1株損益)-2.78ドル (Non-GAAP、前年同期は-1.33ドル)
テスラの業績を占う上で重要なのは、モデル3の生産動向だ。7月に入り、6月最終週に5031台生産し、2Q末の生産目標(週5000台)を達成したことで株価は一時戻り歩調にあったが、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙電子版が22日、「テスラが一部のサプライヤーに対し、これまでに支払った代金の一部を返金するよう求めている」と報じたことで財務不安が台頭。足元で株価は300ドル近辺で戻りの鈍い展開となっている。生産現場のトップエンジニアでシニア・バイスプレジデントのダグ・フィールド氏がテスラを辞職したと報じられたこともあり、モデル3の生産目標達成が一時的に過ぎないのではないかとの懸念も残る。テスラは8月末には週6000台に生産台数を引き上げる予定だ。
今回の決算に関して、ノムラ・セキュリティーズは25日付のリポートで投資判断の買い、目標株価450㌦で強気の見方を示しながら、「倒産危機説が再度現れたが、売上高は一段と拡大する見通し」と本業が好調との見方を披露した。7~9月期(3Q)の売上高はモデル3の生産にけん引されて前四半期比で60%増の64億ドルになるといい、「台湾と韓国のサプライチェーンの調査によると、モデル3向け部品を週あたり生産台数6000台超に見合うペースで調達しているようだ」と指摘。また過去18カ月間、テスラ株の空売り残高が株価と逆相関を示してきたとしながら、「決算発表に向けて、7月末時点の空売り残高は120億ドル規模で過去最高に上るとみる」と分析した。決算をきっかけに空売りの買い戻しが入れば需給的には上昇圧力が掛かりやすいかも知れない。
創業者のマスクCEOの振る舞いも注目される。前回の決算発表時のカンファレンスコールでは、マスク氏がバーンスタインのアナリストが増資について質問した際、「クールじゃない」と述べて回答を拒否。RBCキャピタルマーケッツのアナリストが生産が遅れているモデル3に関して、予約したうちの何パーセントが生産されたのか質問した際には「それらの質問は、かなりつまらない」と述べ、真剣に答えようとしなかった。マスク氏の天真爛漫なツイートも投資家からすれば悩みの種だ。
モルガン・スタンレーは25日付のリポートで「テスラ株の乱高下が続いている。その要因はメディア報道、アナリストレポート、マクロ経済イベント、奇異なツイートと様々だ」としながら、「株価はフェアバリューに近い水準にあるとみており、投資家が株価の方向性をよりつかみやすくなる機会が生じるのを待ちたい」とした。ある投資家から先日、モルガンに質問が寄せられた。それは「テスラはモデル3の受注残が40万台を超えていると依然述べているが、公式ウェブサイトのオンライン受注コーナーには1~3カ月後に納車とある。しかし、週当たりの生産台数を5000台と仮定するなら、18カ月分の受注残が存在することになる。そのような状況なのに6万台(週当たり5000台×12週間)もの注文を受け付け、これを先に納車することができるのか」という内容とのことだったという。
★モデル3の生産台数のコンセンサストレンドは各四半期横ばい状態
【週5000台を達成できれば、1四半期(13週)で6万5000台になるはず!】
(注)QUICK FactSet Workstationより作成
モルガンは、納期の正確さ、正確なモデル構成、そして「架空の」受注残などは正確な予測を困難にする要因の一部に過ぎないとしながら、「あのような短い納期をテスラはなぜ宣伝しているのか、と心配する投資家もいるかもしれない」と指摘する。今回のカンファレンスコールでもアナリストから厳しい質問が出る可能性があり、マスクCEOがサプライヤーへの返金要請報道などに丁寧に答えて信頼回復を果たせるのかがポイントとなりそうだ。コンセンサスを見る限り、市場はモデル3の量産に依然として慎重なことが分かる。(片平正ニ)
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