米企業の2018年10~12月期決算の発表が本格化している。米国や中国の景気後退懸念が浮上し、株価の乱高下にも見舞われた時期だけに、米中経済戦争の影響がどこまで顕在化するのか、企業トップが摩擦の先行きをどう予想しているのかなど、見どころは多い。逆風が吹くハイテク大手の業績や戦略にも注目だ。主要企業の決算ポイントをシリーズで先読みする。
ネットフリックスが17日に10~12月期(4Q)決算発表を予定している。QUICK FactSet Workstationがまとめたアナリストの調整後EPS予想(37社平均)は0.24ドルで、前年同期(0.41ドル)から大幅に減少する見通し。番組制作費の増加が収益を圧迫しそうだ。また、業績を左右する動画配信の純増契約者数は前年同期比での増加が続きそうだが、市場は会社計画を下回る伸びにとどまるとみている。
▼10~12月期の市場予想
売上高 42億640万ドル(28.0%増)
EPS 0.24ドル(41.5%減、Non-GAAP)
0.24ドル(41.5%減、GAAP)
(注)※予想はQUICK FactSet Workstation。15日時点、EPSは18社の予想()内は前年同期比。
▼純契約者数、会社予想940万人増に対し市場予想は921万人
契約者数は米国外の加入者数が米国内の加入者数を抜き、伸び率も米国外の方が高い。ただ利益面をみると、米国外は契約者増を優先して料金をかなり低めに設定しているため、米国内の方が大きくなっている。それだけに米国内での契約純増数の動向に注目されよう。
会社側は、10~12月期における全世界の契約純増数を940万人(前年同期実績は833万人)と見込む。内訳は米国内180万人(同198万人)、米国外760万人(同636万人)。全世界では前年同期比12.8%増を見込むが、収益源の米国内が同9.1%減となっていることが気掛かり。市場予想は全世界の契約純増数を921万人、米国内176万人、米国外745万人と、いずれも会社計画を下回ると見込んでいる。
同社の契約純増数は増加基調を辿っているが、四半期ごとの振れが激しく、会社予想および市場予想を大幅にかい離することも珍しくない。7~9月期は全世界の契約純増数が696万人で会社計画(500万人)および市場予想(517万人)を大幅に上回りポジティブサプライズとなった。その一方で、4~6月期は全世界の契約純増数が515万人で、会社計画(620万人)および市場予想(637万人)を大きく下回りネガティブサプライズとなった経緯もあるだけに注意が必要だろう。
▼膨らむ制作費、米国内の競争激化
米アカデミー賞の前哨戦とされるゴールデン・グローブ賞では、「コミンスキー・メソッド」などオリジナル作品が5部門を受賞するなど、オリジナル作品の質・評価は高まりつつある。ただ、外部から調達するコンテンツの調達コストが上昇するなど、番組制作費の増加が収益を圧迫しそうだ。
また、動画配信サービスを巡る競争激化も懸念される。ネットフリックスへのコンテンツ提供を打ち切ったウォルト・ディズニーを筆頭に、アップルなどが新規参入するほか、有料会員サービスの一環ながら動画配信サービスを手掛けるアマゾンも不気味な存在となっており、収益源である米国内の加入者数の動向からしばらく目が離せない。
IT企業の代表的な名称として「FANG」が使われ、その一角として注目を集めてきたネットフリックスだが、最近は「GAFA」にその座を譲り存在感が薄くなりつつある。動画配信業界の盟主の座も安穏としてられないだろう。
ネットフリックス株の市場平均の目標株価は382ドルとなっている。足元の株価上昇で目標株価との乖離が15%程度に縮まっていることから、市場予想を下回る決算になるとネガティブに作用する公算が大きい。
▼QUICK FactSet Workstationの「サプライズ履歴」
<過去20四半期決算分析>
EPS実績 対市場予想
上振れ回数 16
下振れ回数 4
EPS実績/市場予想(%)
平均乖離率 +54.0
平均上振れ率 +71.2
平均下振れ率 -14.8
決算発表直後1日の値動き
上昇回数 11
下落回数 9
平均騰落率 +3.5
平均上昇率 +12.5
平均下落率 -7.6
同社の決算発表は概ね市場予想を上回って着地するケースが多く、過去5年(20四半期)で16回も上振れ。その際の平均上振れ率は71%にも達する。その一方で、4回下振れしたが、その下振れ率は15%。この決算発表直後1日の値動きは11回が上昇し、9回下落。平均上昇率10.5%で下落率は7.6%だった。
傾向的に市場予想を上回る着地となり、株価はポジティブに反応することが多い。ただ、市場予想を上回る決算ながら利益確定売り等などで売られたケースも少なくないだけに注意が必要だろう。今回は大幅減益予想および純増数が会社計画下振れ予想と、やや悲観的な見方が多いため、会社計画通りとなればポジティブに反応するかもしれない。(本吉亮)
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